応援が入っていない自治体は容易にパンク

保健所の現状に対して、沖縄県立中部病院・感染症内科の高山義浩医師が、ツイッター上でこう指摘している。

「保健所の業務が大変なのに、総務部や産業部など他の部局から応援が入っていない自治体では、容易にパンクしていきます。電話が通じないなら、誰かが代わってあげるべきです」
「皆で保健所を応援していかないと、クラスター対策がなおざりになり、確定患者を数えるだけ、電話相談に応じるだけになってしまいます。それでは流行は制御できません。いまの保健所って……被災地の役場に似ているかもしれません。あまりに大変で、SOSすら出せないでいます。周りが気づいて、どんどん助けてあげないと」

専門的な知識を持つ保健所が「クラスター対策」である聞き取り調査などに時間を使える状態を整備していかないと、保健所がパンクし、地方も含めてさらに感染が拡大してしまう危険性が高まっていく。

厚生労働省は3月、保健所設置自治体に体制強化を求める通知を送付した。相談業務を各地の医師会や医療機関に委託することや、補助金を使って退職保健師らを非常勤で雇用することの検討も求めた。

保健所が崩壊したら、日本が崩壊する

要請から1カ月が経過したが、感染者は増加傾向をたどる。都内の元区役所幹部は「自治体の中で早急な対策をとって応援体制ができているのは、わずかではないか」と案じる。直接関係のある保健所と危機管理部門以外は危機感に乏しく、「行政は縦割り意識も強いため、急に自分の仕事を止められなかったり、止めたら住民からクレームが来てしまうのではないかと考えたり、縄張り意識が捨てられないのではないか」と問題を指摘。

また、保健所は自治体の中でも専門的な立場であり、東京都の場合、保健所長は東京都人事でもあるため、区役所となじみの薄い人もいる。このため、前出の元区役所幹部は「区の幹部や職員と円滑な連絡体制がとれていない自治体も多い可能性がある。医療崩壊同様の危険にさらされている保健所を助けるには、首長のリーダーシップしかない」と強調する。

つまり、「保健所が検査してくれなかった」などといった住民の不安や不満を解消し、今の保健所の負担を軽減したうえで、感染経路の割り出しといった専門性の高い任務を専門である保健所が遂行するためには、一刻も早いリーダーの決断が必要ということになる。大阪府の吉村洋文知事は保健所職員の過重な負担を軽減するため、さらにICTの活用を図り、その取組みを他県にも紹介していくという。

日本での感染拡大を抑え込めるか否か、重要なカギの一つを持つ保健所――。保健所の増員や、職員の負担軽減、賃金をはじめとする待遇改善、専門家でなくても業務の分散といったマンパワー面でも、精神面でも早急な支援が必要だ。保健所が崩壊してしまったら、クラスター対策が根本から崩れ、日本も感染爆発が起きる可能性が一層高まる。

そして、今なお、感染が増大し、国民の不安や不満が増大している。ワイドショーは視聴率稼ぎのための悪魔のような報道を猛省し、危機の保健所を救う手立てを考えていくべきだ。

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