God is in the details (神は細部に宿る)とはよく言ったもので、明確な戦略コンセプトは、徹底した現場主義とセットにしなければ意味がないことを知っておく必要がある。通常は、この2つが分離され、「私、考える人、あなた、やる人」と、頭と手足がバラバラに動いている。

こんなこともあった。私が「日本市場でダメなら、海外の可能性があるのではないか」とたずねた。彼らは、大した調査もせず、外部のコンサルタントに調査を依頼し、海外はダメだと先生が言ったという。私が「それなら、一緒に調査に行きましょう」と海外に同行し、彼ら自身が海外の顧客と交渉するのを、自らの目で見届けた(結果は残念ながらうまくいかなかった)。しかし、こうしたアクションの結果、わからなければまず自分でやってみようという意識が高まり、組織力をまとまった方向に向けられるようになった。

不振企業では、「即実行」というアクションがとられず、企画に対しての検証が放置されている。この組織も「海外出張は金がかかる」とか「この大事なときに旅行か」などと嫌みを言われ、企画がつぶされてしまっていた。考えてみれば、外部のコンサルタントに高いお金を払って調査を行うより、直接自分で海外に行って、やれるだけやってみればよいのだ。そのほうがよほど安上がりだし、実感値も高い。

だから、事業を復活させることができる秘訣を一言で言え、と言われれば、我々は「ABC」と答えることにしている。ABCというのは、「A=あたりまえのこと」を「B=ばかにせず」、「C=ちゃんとする」の頭文字をとったものだ。我々が手伝えることは、経営と実務のPDCA (Plan Do Check Action)をひたすら実直に回すことだけである。