ヒエラルキーを脱した抜擢人事が戦える組織をつくる

次に、適切な組織、体制の構築である。従来の組織体制で再生プランを手がけても、うまくいかないことが多い。こうなるまで放っておいたのは既存の組織なのだ。その組織が心を入れ替え、明日から全く違うやり方をするというのは考えにくい。「戦える組織」をつくるため、既存組織のヒエラルキーにあてはまらない抜擢人事を行うことになる。

我々は、このセオリーに従って、改革チームを組成した。しかし、このクライアントは、従来のヒエラルキーに沿った形で「担当課長」や「担当部長」でプロジェクトを進めようとした。我々は、経営トップと議論をし、最終的には、間接部門や他事業部からも人を抜擢し戦闘配備した、新たな組織を組成した。ここからわかるように、再生の現場では、しばしば大胆な組織改革が必要となり、こうした意味でも、プロジェクトは経営トップを巻き込んだ体制づくりが前提となる。

再生が始まった組織では、たび重なるリストラと「土足で上がり込んでくる外部の人間」に、不安と疲弊が入り交じった状態になっている。

こうした組織の不安を解消する最もよい方法は、なによりまず「短期で出せる成果」を出すことだ。しばしば古い体質の組織では、車座と称して管理職が飲み会を開き、現場の愚痴を聞いて回るということをしがちだが、「具体的成果」のないまま飲み会をやっても、ネガティブな雰囲気が組織に蔓延するだけである。

弊社では、「短期に出せる成果」のことを、クイックヒットと呼んでいる。クイックヒットは必ずしも経営課題と直結していなくてもよい。成果の大きさよりもスピードのほうが大事だ。我々の経験から言えば、最初のクイックヒットは1カ月以内に打て、である。

最後に、絶対に再生できるという信念が必要だ。今まで改革を進めてきた経験のある方は、よく胸に手をあてて自分に聞いてみてほしい。「あなたは、本当に改革が成功すると信じていたか」と。おそらく、大多数の人が「また始まったか」という気持ちで、上から言われたことをやっていただけという状況ではなかったか。