サービス事業の売上高は「フェイスブック全体の7割弱」

「アップルはどんな会社なのか?」。まず、アップルの特徴を見ていきたいと思います。

多くの人にとって、アップルと言えば、最初に思い浮かぶのがiPhoneではないでしょうか。iPhoneはApp Storeというスマートフォンアプリのダウンロードサービスによって、プラットフォーム型のビジネスモデルの構築に成功しました。ただし、そうしたサービス事業が大きな収益を上げるまでには多少の時間がかかってしまいました。

アップルの売上高に占めるサービス事業の割合をみると、たとえば2014年9月期では、iPhone、iPad、Macといった主力製品が9割近くを占め、App Storeや音楽配信サービスなどのサービス事業は1割程度でした。それが、2019年9月期の売上高は2602億ドルで、サービス事業は463億ドルです。つまり、サービス事業の占める割合は17.8%に達しているのです。

売上高に占める割合が17.8%と聞くと、「まだまだ少ないのでは?」と感じる人が多いかもしれません。しかし、そのサービス事業の売上高463億ドルは、日本円では5兆930億円です。国内企業ではNTTドコモの4兆8408億円を上回っています。また、GAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)の一角であるフェイスブックの2019年12月期の売上高が707億ドルなので、「アップルのサービス事業の売上高はフェイスブックの売上高の約7割弱である」という言い方もできるでしょう。

いま、iPhoneをはじめとする主力製品の販売台数が頭打ちになる中、サービス事業は順調に拡大を続けています。今後は、サービス事業がアップルの成長を支える主力になることが予想されます。

化け物のような収益力を誇る

アップルの企業としての“実力”は売上高だけではありません。アップルの凄さは、収益性にも表れているのです。前述したように、2019年9月期のアップルの売上高は2602億ドルで、粗利は984億ドル、営業利益は639億ドルでした。したがって、売上高営業利益率は24.6%です。

はたして、この数値は高いのか、それとも低いのか? じつは、化け物のように高い数値です。財務省が発表している「法人企業統計」(2018年度)によると、国内の製造業の売上高営業利益率の平均は4.6%となっています。製造業の中では、アップルに事業内容が比較的近いと思われる「情報通信機械」のカテゴリーをみると4.5%です。これが、日本のメーカーの平均値なのです。

個別企業と比べても、数値の高さは際立っています。たとえば、トヨタの2019年3月期の売上高は30兆2257億円で営業利益は2兆4675億円です。したがって、売上高営業利益率は8.2%。もう1つ、ソニーの2019年3月期は、売上高8兆6657億円、営業利益8942億円なので10.3%になります。トヨタもソニーも、国内の製造業では収益力の高さで一歩も二歩も抜きんでた存在ですが、アップルの半分以下の水準に留まっています。売上規模が小さいメーカーで、数値の高い企業をたまに目にしますが、これほど巨大な売上高を持つ企業で20%を超える売上高営業利益率というのは、なんとも恐ろしい数字です。