アベノマスクの愚策に世界が冷笑

この緊急事態宣言発令が間近に予期される切迫した動きの中で、その週末の3月29日に菅官房長官の姿は、東京ではなく沖縄県内で観光業界をはじめとした経済人らとの会合の場にあった。沖縄訪問の目的は6月の沖縄県議会議員選挙に向けたてこ入れとされているが、危機管理の要である官房長官の出張として不要不急のものであることは間違いない。この出来事は、菅官房長官が首相官邸の中で置かれている状況を窺い知ることができるものだった。

4月1日のエイプリルフールかと揶揄やゆされたアベノマスク(1世帯・布マスク2枚)の1億枚配布などに代表される安倍政権の国民への支援策も極めてチグハグな印象を人々に与えている。このアベノマスクは4月2日付の朝日新聞の報道によると、安倍首相が官邸官僚の発案によるものを採用したとされている。この愚策に対し自粛が長引く中で経済対策を待ち望んでいた有権者からは怒りが寄せられ、ブルームバーグら海外メディアに冷笑される始末となった。

第1次安倍内閣の末期を彷彿とさせる今

政権発足当初の力強いリーダーシップでアベノミクス政策を推進してきた首相官邸の姿は失われており、4月7日に経済対策案がまとまるまでの間に、自民党の政調部会に押し掛ける利益団体向けの和牛商品券らの報道が飛び交い、金額・対象が二転三転する現金給付などの観測気球記事が次々と国民の目に飛び込んできた。実際、巨額の経済対策ともなればさまざまなプレーヤーがかんでくることは必然的なことであるが、国民が世論調査で最も望んでいた消費税減税の声を無視し、利権に群がる人々の声がメディアを通じて垂れ流し状態になった姿は実に醜悪なものであった。

その結果として、最終的にまとめ上がった経済対策は事業規模こそ100兆円超えの大規模なものとされているものの、必ずしも国民からの評価が高いとは言えない。露骨に各省庁や利益団体と調整した政策パッケージは、その内容について中途半端な印象を国民に持たれてしまっている。これもやはり首相官邸による危機管理および各種調整力が弱まり、安倍政権が迷走している姿を露呈した事例と言えるだろう。むしろ、安定感を失った行政運営のありさまは第1次安倍内閣の政権末期の姿を彷彿とさせるものとなっている。