安倍政権内で誰が責任者なのかもよくわからなかった

ペンス副大統領の実直な姿勢は、菅官房長官のような実務家気質の雰囲気と通じるものがある。そして、トランプ大統領の新型コロナウイルス対策に関する初動についての世論調査の数字も上々となっている。安定した政権運営を望むなら、その番頭役が効果的に機能することは欠かすことができない。

一方、新型コロナウイルス問題への対応において、安倍政権の初動に関する評価は国民の間で必ずしも高い支持を得ていない。安倍政権内で誰が責任を持ってこの問題に対処しているのかという基本的な事柄ですら、3月6日に西村康稔経済再生担当大臣が新型コロナウイルス対策の担当大臣に任命されるまで国民の目には明らかではなかった。

実際、各種報道から垣間見られる安倍政権の行動は政府与党として整然としたものとは言えないものであった。日本で新型コロナウイルス問題が最初に大きな注目を浴びた出来事は、横浜港に寄港した豪華クルーズ船問題であった。問題発生当初、隣国中国では既に大混乱が発生していたが、日本では感染症対策本部は立ち上がっていたものの、加藤勝信厚生労働大臣が悪戦苦闘する中で、小泉進次郎環境大臣らは同本部の会議をサボって地元会合に参加している程度の極めてまとまりのない状況となっていた。そして、さまざまな悪条件が重なった結果として、欧米メディアの過剰報道等も相まって、同クルーズ船への対処は日本の危機管理体制に対して世界から疑問を呈されるシンボルとなってしまった。

安倍政権は菅官房長官の力を借りるべきだった

その後、2月27日には、文部科学省との十分な調整が行われていないにもかかわらず、安倍首相は突然の記者会見で小中高校休校について地方自治体への要請を行った。この唐突な要請によって、子どもの世話と仕事の都合との間に挟まれた保護者が日常生活の段取りの急な見直しを迫られることになり、少なくない国民の間に安倍政権の強引な対応への不平が生まれることになった。

安倍政権の危機管理力が問われた新型コロナウイルス問題の初動対応において、菅官房長官の影は一貫して薄いものだった。特に2月27日の小中高校の休校要請という重要局面において、菅官房長官はその意思決定の場から外されていたとされている。内政における調整役として重要な機能を担ってきた菅官房長官をスポイルしたことで、調整不足の強引な政権運営が発生し、上記のような混乱が生まれたと見ることもできるだろう。

3月24日には安倍首相と国際オリンピック委員会のトーマス・バッハ会長が東京オリンピック・パラリンピック延期で合意した後、小池百合子都知事が東京都民に週末の外出自粛を呼びかけるとともに、緊急事態宣言発令を可能とする特措法に基づく政府対策本部が立ち上げられる状況となった。