ダンケルク目前での停止命令

結果として、ブーローニュとカレーの奪取には、よりいっそうの時間と努力が必要とされることになる。

大木毅『戦車将軍グデーリアン 「電撃戦」を演出した男』(KADOKAWA)

5月22日の正午になって、第19自動車化軍団はようやく攻撃を実行したが、第2装甲師団がブーローニュを占領できたのは、3日後の25日だった。第1装甲師団のカレー攻略も26日まで長びく。この間に連合軍は、最後の港であるダンケルクの防備を固めていた。

それでも、5月24日には、グデーリアン軍団の先鋒は、ダンケルクまであと15キロの地点まで迫っていたのである。

この強力な装甲部隊がダンケルクに突入すれば、弱体な敵守備隊はひとたまりもなく粉砕されてしまうだろう。包囲された100万の連合軍は退路を失い、降伏するほかなくなる。

だが、連合軍にとっては、奇跡というしかない事態が訪れた。第19自動車化軍団ほかの海峡沿岸部にいたドイツ装甲部隊は、停止を命じられたのである。

【出典】
・Heinz Guderian(Hrsg.), Mit den Panzern in Ost und West. Erlebnisberichte von Mitkampfen aus den Feldzugen in Polen und Frankreich 1939/40, Berlin et al., 1942.

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