メリットとしては、贈与した時点の評価額で相続税が計算されるので、将来値上がりしそうな株や不動産を移転したいときに活用するべき制度といえます。よくあるのが、オーナー社長が自社株を後継者である子に贈与する場合です。また、暦年贈与よりも非課税枠が大きいため、1度に大きな財産を贈与したいときにも便利です。デメリットになるケースとしては、贈与した資産が将来値下がりしたときです。また、1度相続時精算課税制度を選ぶと当事者間での暦年贈与は適用できなくなるので、よく考えてから行ったほうがよいでしょう。

暦年贈与と相続時精算課税制度でどちらが得かというのは、移転したい財産や相続税の税率などによってケース・バイ・ケースです。そもそも相続税がかからない場合は、相続時精算課税制度を使うという手もあります。それから贈与する側の年齢も判断材料の1つです。寿命は人それぞれなので一概には言えませんが、まだ60歳くらいの方であれば、110万円以下で長期間かけて暦年贈与することができるといえます。

お得な特例も知っておこう

生前贈与には、暦年贈与や相続時精算課税制度と併用できる特例措置がいくつかあるので、それらもお得に活用しましょう。まずは、「教育資金の一括贈与時の非課税」と「結婚・子育て資金の一括贈与時の非課税」です。前者は、30歳未満の子や孫への教育資金の贈与が対象で、子や孫1人あたり1500万円までが非課税となります。後者は、20歳以上50歳未満の子や孫への結婚と子育て資金の贈与が対象で、1000万円までが非課税です(ただし結婚費用は300万円まで)。

どちらも2021年3月末までの特例で、贈与を受ける子や孫の前年所得が1000万円以下でなくてはならないという条件があります。また、教育資金の一括贈与については子や孫が23歳以上の場合用途が限定されており、学校以外の習い事に充てる費用は非課税枠の対象ではありません(ただし留学費用は対象)。注意点としては、相続発生前3年以内に贈与された金額のうちの未使用分については、一定の場合を除き相続税や贈与税が課されるため、余裕を持った贈与を心がけましょう。

また、住宅の購入資金を贈与する際の「住宅取得等資金の非課税」や、夫婦間で自宅の不動産を贈与する場合の「おしどり夫婦の特例」という制度もあります。住宅について考えるときに思い出したい特例です。