来年1年間の学習に影響するかもしれない

そして、今回の長期休校はそのような規模ではありません。日本全国の子どもたちの学習が一斉に止まってしまうのです。そしてそれを取り戻す機会は、春休みが明けた新学期にしかありません。例えば新6年生であれば、5年生の未学習部分の授業を行いながら、本来の6年生の学習も行うことになります。当然、本来6年で学習すべきだった時間は短くならざるを得ません。この1カ月間の学習機会の喪失は、来年1年間の学習にも影響を与えることになるのです。

もちろん、どの学校も家庭学習のための課題を出しています。ですが、どの子どもも毎日6時間分はおろか、ある程度でも机に向かうとはなかなか考えにくいものです。すると、課題を行い、さらには塾や学習アプリなどで学習を重ねる子と、学習をしない子の間の学力格差が拡大してしまうことにつながりかねません。子どもたちの学習保障を担う公立学校の教師として、この学習機会の喪失が後を引くことにならないか、深く懸念しています。

今回の休校要請を問題視する論点は、多くが「子どもが在宅している間、保護者が働けない、生活が立ち行かない」というものです。もちろんそれも重要なことですが、その一方、休校によって子どもの学習機会が奪われてしまう、ということにはあまり言及されていないようです。この学習機会の喪失は、多くの方が考える以上に深刻な影響を与えかねません。

家にこもる日々で、虐待が深刻化する恐れ

また、子どもの体力面の心配もあります。通学や体育の授業がなくなることで、子どもが体を動かす機会が減る恐れがあります。公園などにあまり多く集まって運動するのも感染防止の観点からはばかられ、結果として子どもの体力低下につながってしまうのは問題です。

さらに言うと、虐待やネグレクトを受けている子どもにとって、長期休暇期間は特につらい思いが続く時期です。給食がないことで、食事を十分に食べられないような状況になってしまう恐れもあります。今回の休校と同じくらいの期間に当たる夏休みであれば、外にでかけるなどのストレス解消の機会もあります。ですが今回は、できるだけ家の中にいることを推奨されている状況です。子ども、そして同じく長時間過ごす保護者にかかるストレスは、ずっと大きなものになるでしょう。普段の夏休みや冬休みの時期以上に、問題がエスカレートする可能性があります。

そのために、虐待等が疑われる子どもに丁寧に目をかけて、場合によっては頻繁に家庭訪問をする必要があるかもしれません(もちろん、感染症対策を行った上で)。こうした一連の問題を少しでも減らすよう、今日も先生方は尽力していることでしょう。