実は定年制よりインパクトが大きい「役職定年」
いまの50代、特に後半世代の多数は管理職の地位まで出世していますが、大企業の半数以上では、50代前半から後半にかけて「役職定年制」という自動的に後進にポストを譲る仕組みが適用されます。就いていた役職位の手当等がなくなり(残業代は対象となりますが)、手取り収入が減額されます。
一般的に、60歳定年退職後の再雇用で給与が大きく下がるとともに、仕事に対するモチベーションも下がると言われていますが、実は、60歳定年よりもこの役職定年制の適用が、本人のモチベーションダウンが大きいのです。仮に役職定年で給与減額が20%だとしたら、モチベーションの下がり方は70%以上のインパクトがあると言われています。
これは下がる金額の大小の問題ではありません。確かに組織の業績責任のプレッシャーから解放されてホッとする感覚もあるかもしれませんが、多くの元管理職は、まだまだやれるし、これまで身を粉にして会社に貢献してきた自負を持っています。給与減額以上のショックが大きいのです。
存在感が薄いだけの「妖精」か、実害のある「妖怪」か
こうして残業代の請求できる一般社員に降職するのですが、ここで大きく分けて3つのタイプに分かれていくことになります。
一つは、管理職の任を解かれても、一定のパフォーマンスを維持し、立場を変えて組織に貢献する「頼れる兄貴」になるパターン。
二つ目は、「あまり貢献できなくても、大きな失敗さえしなければいい」というスタンスで、人畜無害で存在感の薄い「妖精」になるパターン。これは本人のマインドとしては完全にリタイヤモードとなっています。「いや、もうそういう立場ではないから」「あと数年で定年だし、いまから頑張ってもそれほど貢献できないし……」という雰囲気で気配を消そうとしているように思えます。
三つ目は、周囲のメンバーと摩擦を生み迷惑を掛けるなど実害のある、同じくこの世の者とは思えない「妖怪」パターン。
妖精も妖怪も無責任という点で共通していますが、妖怪は過去の栄光に囚われ、プライドが捨てきれないでいるのです。「こんな雑用などやらされてはプライドが傷つく」「自分の経験が活かせない」「こんなのは若い社員がやる仕事だ」という言動が節々に現れます。
しかしイマドキの上司としては、こちらの世界に実体のない妖精や妖怪であっても、会社からはヘッドカウントされる彼らを何とか使いこなさなければなりません。