筋肉を減らさないためには「筋トレ」が一番
近年では80歳どころか、90歳、100歳までご在命の方も珍しくなくなってきています。90歳、100歳になればさらに筋肉細胞の死滅、筋肉の萎縮は進むと考えられます。
ということは、長生きするほど、サルコペニア予防の重要性がより高まるわけです。そして、このサルコペニア予防として現在分かっている最も効果的な運動は、筋肉に強い負荷をかけて鍛える筋トレです。高齢でもしっかりと筋トレをしている方は明らかに体つきが違いますよね。
筋トレ実施者では高齢でも一般の筋トレを行っていない若年者よりも筋力が強く、加齢による筋力の低下率は非実施者の3分の1程度に抑えられているという報告があります。
ほかの運動も効果がないわけではありませんが、筋トレほどの明らかな効果を得るのは難しいようです。ランニングや水泳を行っている高齢者では、運動を行っていない同年代の人と筋肉量にほとんど差がないという報告もあります。
「サルコペニア予防にはしっかり筋トレ!」が合言葉だといえますね。
「今さら遅い」なんてことはない
「年をとってから筋トレを始めても筋肉はつくの?」などと疑問に思われるかもしれません。
答えは断然「イエス」です。
ものすごい筋肉をした高齢のボディビルダーの中には、40、50歳の中年から筋トレを始めた方も少なからずいらっしゃいます。
高齢者の筋トレ効果を示す研究はたくさんあって、70歳でも80歳でも、10回をなんとか反復できるくらいに強めの負荷でしっかりと筋トレをすれば筋肉は大きく成長します。一方で軽めの負荷での筋トレでは、ほとんど筋肉が大きくならないという研究もたくさんあります。
図表1は、60~72歳の被験者が脚の高負荷筋トレを、週3回行った実験の結果です。
3カ月間の筋トレ実施によって、なんと脚の筋肉が平均で11%も肥大しています。高齢者ということで元の体力のレベルが低く、筋肉が肥大しやすいという要素はあるでしょうが、値そのものは、若者の場合の筋トレ実験と比べて遜色ありません。
加齢により死んだ筋肉の細胞は戻ってきませんが、残された筋肉は高齢になっても、しっかり筋トレで鍛えれば太く成長させることが可能なのです。
つまり筋トレについては高齢になってしまったから手遅れということは決してありません。始めるのに遅すぎることはないのです。平均年齢80歳を超える被験者を用いた実験でも筋肉がしっかり肥大したという報告はいくつも出ています。