元来の医療費控除よりずっとハードルは低い
筆者のオフィスの近くにあるドラッグストアの売り場では、個々の医薬品には表示がなされているが、セルフメディケーションを推進する告知はされていなかった。厚生労働省は、本気でセルフメディケーションを浸透させようとしているのだろうか。
いろんなしがらみがあるだろうが、本気で国民の健康を考えているのであれば、ドラッグストアに「セルフメディケーションしましょう!」という、のぼりくらい立ててもよいと思うのだが……。
誰でも、好んで病気やけがはしないだろう。そうはいっても、1年の間には、どんなことが起こるかわからない。スイッチOTC医薬品に該当しない市販薬も、医療費控除として使える場合がある。
まずは、薬を購入した領収書は専用の箱を作って、そこにためておくのがよいだろう。サラリーマンであれば、毎年、人間ドックなどの健康診断を受けるはずだ。
1年の薬の領収書を合計してみて、医療費控除にするのか、セルフメディケーション税制で申告するのか検討する。
元来の医療費控除を受けようとすると、10万円(または合計所得金額の5%のどちらか少ない額)を超えなければ該当しない。一方、セルフメディケーションの場合は、12000円を超えれば該当する。
セルフメディケーション税制の「お得感」はその人次第ではある
年間12000円を1カ月にすると、1000円だ。1カ月の1000円くらいは市販の薬を買うのではないだろうか。
例えば、1カ月5000円スイッチOTC医薬品を1年間買ったとすると、
5000円×12カ月=60000円
60000円-12000円=48000円
この人の所得税の最高税率が20%であれば、
48000円×20%=9600円
の還付となる。
住民税も所得控除され、その分手取りが増えることになる。
1年間、60000円を医薬品に使うと、その16%程度にあたる9600円が戻ってくるというわけだ。手間はかかるが、やってみる価値はあるかもしれない。
しかし、ドラッグストアで医薬品が定価で販売されていることは少ないのではないだろうか。筆者は、実際にドラッグストアに足を運んでみたが、スイッチOTC医薬品に該当しない医薬品のほうが割引率が高いような気もした。
ドラッグストアも商売だ。同じ様な効き目が得られそうな風邪薬がいくつかあり、スイッチOTC医薬品のほうがよく売れているとなれば、割引率を低く設定しているかもしれない。
知識として、セルフメディケーション税制を知っておくことはよいだろう。しかし、割引率のことや手続きの手間を考えると、実際に得した気分を味わえるのかどうかは人それぞれなのかもしれない。
かの頭痛薬の半分は優しさでできているとCMで言っていた。税に関する手続きも、もっと人に優しくあってほしいものだと感じている。