「年金はもらえない」と主張する人たちがいる。本当にそうなのか。調達・購買コンサルタントの坂口孝則氏は「年金崩壊説は20年前からあるが、実は、多くの国民で支えているある程度健全な状態だ。自分がもらえる年金額を知りたければ、『ねんきん定期便』を確認するといい」という――。

※本稿は、坂口孝則『日本人の給料はなぜこんなに安いのか 生活の中にある「コスト」と「リターン」の経済学』(SB新書)の一部を再編集したものです。

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「未納率が半分」は数字のカラクリ

年金に関する誤解①:年金を払わない人がたくさんいる

新聞などを読んでいると、「多くの人が年金を払っていない」と書かれています。年金制度への不信感から「年金なんて誰も信じちゃいない、だから払わない」というわけです。年金の支払いをしていない人の率を未納率と呼びますが、中には「未納率が半分」と書き立てるメディアもあります。

でも、不思議じゃないですか? みなさんのまわりに未納者っていますか? たぶんいないと思います。年金は基本、誰もが平等に、会社員だったら会社が天引きするシステムだからです。ただ、そこには「数字のカラクリ」が存在します。

年金には2通り(厚生年金に加入する夫をもつ専業主婦を含めると3通り)あります。それぞれの人数は以下になります。

・国民年金加入者……1505万人
・厚生年金加入者……4356万人
・国民年金加入者(専業主婦等)……870万人 合計6731万人

この数字のうち、払っていない人は次のとおりです。

・年金の保険料を免除されている人……574万人
・ほんとうの未納者……157万人 合計731万人

この731万人の母数は「国民年金」になりますから、先の1505万人と比べると、たしかに半数近くが未納に見えます。しかし、免除されている574万人は、行政が認めた「支払う能力のない人たち」です。文脈上は総数6731万人のうち、未納者157万人という、こちらの比率を見るべきです。そうなると未納率はたった2.3%です。騒ぐにはあまりにも一方的な報道だと思いませんか?

2.3%だから、みなさんのまわりに未納者がほとんどいないわけです。年金は現実には、多くの国民で支えているある程度健全な状態にあるわけです。