筆者もかつては領収書を1枚1枚検算していた
現行の医療費控除については、国税庁のサイトで確認することができる。
申告する方やその方と生計を一にする配偶者その他の親族のために、令和元年(平成31年)中に支払った医療費がある場合は、次のとおり計算した金額を医療費控除として、所得金額から差し引くことができます。
大きな手術や慢性的な病気などで、支払い能力に支障をきたす場合には、所得控除をすることで、税金の負担を少なくしようという趣旨は、原則、引き継がれてきたと考えてよいだろう。
少し古い話で恐縮だが、2011年2月27日「ガッチリマンデー」という番組で国税庁の仕事が紹介されたことがあった。その際、上野税務署の職員が還付申告の検算をしている映像が放送された。
かつては、筆者が働いていた大阪国税局官内の税務署でも、還付申告を提出した納税者に少しでも早く税金の還付をするために、残業命令を出して還付申告の検算をするという日が設けられていた。申告会場では申告書を完成させ受付するのが精いっぱいだから、チェックは後日行うのだ。
「本当に1枚1枚検算するんですか?」
番組の中でもそんな質問がなされていた。
歯科矯正は医療費控除になるのか?
給与所得者の還付申告については、各税務署ですべて検算をしていた。計算や添付書類に誤りが見つかった場合は、速やかに「還付留保」担当に引き継がれ、申告書を提出した本人に連絡をとる。
その対象は、サラリーマンの場合が多いので、昼休みも電話の前から離れられなくなる。筆者は毎年、「還付留保」の担当に当たらないように祈ったものだ。
医療費に該当するかどうかという部分で気を付けないといけないのは、医師が行った行為でもそれが治療かどうかという点である。例えば年頃の娘さんが歯科矯正を行った場合、美容のためでなく、医学的に歯科矯正が必要であったことを医師に証明してもらわなければならない。
病院で処方してもらう薬では治らなかったが、民間療法を行っている道場に通ったら症状がなくなったというようなケースもあるだろう。しかし、この場合は、医師による処方でないと医療費控除には該当しないのではないかという理由で「還付留保」となるわけだ。
なぜそのようなことが起こるのかというと、国税の職員は医療の専門家ではないからだ。それが医療行為かどうかは判断することができない。歯科矯正の場合、歯科医師に「この歯並びのままだと消化器官への影響もあるので、歯科矯正の必要があります」と一筆書いてもらえばOKということになる。