【leverage point】思い出の詰まった建具をそのまま活かす

そこで和室は以前の和室の再現に近いかたちを目指し、パーツを移築することに。おじいちゃんが40年前に特注した建具は手彫りの加工が施された質の高いもので、輪島の職人さんに塗り直しを依頼し、美しく再生されました。その和室をホームシアターにすることで、おじいちゃんの思い出が詰まった部屋で、趣味を楽しめるようになったのです。

日当たりも風通しもよい南側のバルコニーは、愛猫や、遊びに来た孫が自由に走り回れるようにウッドデッキに変更。社交的な夫妻はホームシアターやウッドデッキで友人をもてなすこともしばしばだとか。

来てくれた友人たちは、建具などが移築された和室のホームシアターで和みながら「昔の家そのままだね」と驚かれるそうです。Iさんの家は、マンションでもリフォームの工夫次第で、以前の家の記憶をつなぎ、趣味の空間を確保できるという好例でしょう。

また、横田さんからはこんなアドバイスも。「和室、茶の間は将来、万一介護が必要になったときに、寝室にもできます。シニア世代のリフォームなら、リビングとオープンでバリアフリーにつながる茶の間をつくっておくのもおすすめです」。

同じ介護されるのでも、独立した寝室よりオープンな茶の間のほうが孤独にならず、ベターだそうです。


 1/一般的なマンションの和室をおじいちゃんが40年前に特注した建具を再生させてリフォーム、スクリーンを備えてホームシアターに。昔からの空間にいる感覚で趣味を楽しめ、スクリーンを隠したいときは手前に障子を入れられる。新しいのに、どこかレトロで懐かしい部屋ができ上がった。

2/ホームシアターの和室はリビングとバリアフリーでつながり、普段はオープンに使える。リビングの収納家具は手持ちのものと並べて違和感ないよう、デザインを合わせ大工さんに特注。モノを大事にするIさんの暮らしぶりが伝わる。

3/ベランダに敷いたウッドデッキは間伐材など木の廃材の粉と樹脂を固めた、雨に強い素材。木の風合いを楽しみながら15年から20年メンテナンスフリーと、手軽に使える。

4/愛猫用の月見台も備えたウッドデッキのバルコニー。下を走る電車が眺められることも、列車マニアのIさんがこのマンションの購入を決めた理由。

(間取り図作成=長岡伸行)