※本稿は、木村知『病気は社会が引き起こす』(角川新書)の一部を再編集したものです。
テレビの影響で「不必要な受診」をする人々
著名人が白血病や膵臓がんなどの闘病生活を告白したり、めずらしい感染症が国内で発生した、との情報がテレビで取り上げられたりすると、直後から数日間、心配のあまり続々と医療機関を訪れる人が急増するという現象が、ここ数年、後を絶たない。「新型インフルエンザ騒動」の火付け役でもあるが、このような患者さんの受療行動に多大な影響を及ぼしているのが、テレビの情報バラエティと呼ばれる分野の番組だろう。
MCが深刻な表情で病気に対する不安をあおりつつ、スタジオに登場した白衣の医師がわかりやすい言葉で医学的解説を付け加えて箔を付け、「このような症状に心あたりがある人は、早めにお医者さんへ」というお決まりのパターンが放送されると、翌日の外来は私の予想した通りの状態となる。
もちろんそのほとんどは、著名人が告白したような疾患とも稀な感染症ともまったく関係ない不必要な受診だ。不安をかき立てられ、本来であれば消費する必要のない時間と費用を使ってしまったのだから、テレビの被害者といってもいいだろう。
わかりにくいニュースを視聴者にわかりやすく伝えるというのが情報バラエティ番組のコンセプトなのだろうが、わかりやすい言葉を使うあまり、間違った知識を視聴者に植え付けることが懸念されるシーンも多々見受けられる。ぜひこのような番組を視聴する際には、鵜呑みにしないよう気をつけてほしい。