バッシングするのは他人の「タダ乗り」が許せないから
昔、不倫した人間への刑罰は極めて厳しかった。それでも不倫する人間を根絶することはできなかったのだから、もともと遺伝子に組み込まれているとする考え方は、頷ける。
では、不倫した人間を他人がバッシングする理由については、
「会社という組織をイメージしてもらうといいと思います。共同体というのは各々のメンバーが支払うコストで利益を出し、その運用益をそれぞれのメンバーに還元することで成り立っています。働かずに給料だけ受け取る人間が増えたら会社は崩壊してしまいます。だから共同体のメンバーはタダで得する人間を非難します。
不倫は家庭を維持するための労力を回避して、恋愛のおいしいところだけを享受しているように見えます。不倫バッシングとは、そういったタダ乗りを防いで共同体を維持するための社会的な制裁なのです。
不倫を非難すると、自分は正義を執行しているという喜びが伴います。『この人が叩かれたら嬉しい』という感情は汚らしいもののようにいわれますが、そうした感情を原動力にして、不倫を犯した者に制裁を加えるのは、共同体を維持するために必要なんです。
それは人間が進化の過程で身に付けてきた知恵です。そうして不倫を非難する人もまた、不倫をダシにして正義を執行する喜びを搾取しているので、正義を振りかざす人も、ある種、同じようにズルをしているということです」
結婚前に、相手の不倫遺伝子を知りたいか?
現代は、携帯電話やSNSの普及で、歴史上もっとも不倫をしやすい社会環境である。まして2人に1人が不倫遺伝子を持っているなら、週刊不倫という雑誌を創刊してもタネが尽きることはないだろう。
中野によれば、今は簡単な検査をすれば、不倫遺伝子をもっているかどうか分かるという。あなたが結婚前の若い男女だったら、相手の遺伝子を知りたいと思うだろうか。もし、不倫遺伝子を持っている相手と知りながら結婚したとしても、うまくいかないと考えるだろう。
だが、ものは考えようである。結婚すれば、人妻と人夫である。私たちは毎日W不倫しているのだと「逆転の発想」をすれば、案外うまくいくかもしれない。
「馬鹿いってんじゃないよ」と礫が飛んでこないうちに、おあとがよろしいようで……。(文中敬称略)