店側すら予想していなかった「大番狂わせ」だった
2つ目のポイントは「アロスティチーニ」の味です。本国イタリアのアロスティチーニは、羊肉を鉄串に刺し、塩やハーブ、にんにくなどでシンプルに味付けして焼いたもの。一方、サイゼリヤのアロスティチーニは、串焼きの本体はほぼ塩のみの味付けでしたが、横にオリジナルのミックススパイスを添えてあり、これが「おいしい」「ヤミツキになる」と大評判でした。
羊肉によく合うだけでなく、このスパイスだけを別売りしてほしいという声さえ上がっていたのです。SNSではこのスパイスを転用した卓上カスタマイズ料理を披露する猛者も現れました。「フリウリ風フリコ」に混ぜてフォッカチオでディップしたり、「ディアボラソース」とミックスしてチキンにかけるなど大胆にアレンジしていました。
3つ目は、発売後の予想を超えた人気の高さで販売中止になったことです。
「話題にはなりそうだが、たくさん売れそうにはない」という大方の予想をひっくり返し、ヒット商品となりました。新商品の発売にあたってサイゼリヤは販売予測を立て、それに基づいて原材料の調達、確保を行っていたはずですから、このヒットは店側も予想していなかった大番狂わせと言えるでしょう。
ハーブを複数ミックスすることで食べやすく
私もサイゼリヤファン、そして羊肉ファンとして、発売直後に「アロスティチーニ」を食べに行きました。そしてこの一連の「事件」とも言える世間の盛り上がりの中で、面白い現象に気づきました。
サイゼリヤのアロスティチーニのミックススパイスはかなり独特です。本来アロスティチーニは塩とハーブのシンプルな味付けです。本国イタリアでもさまざまなスタイルはあるようですが、おおむねハーブの「ローズマリー」が使われているようです。これはほかのイタリアの肉料理にも共通する要素です。
サイゼリヤのミックススパイスにもおそらくローズマリーは入っていますが、さらにオレガノやタイムなど複数のハーブがミックスされているようでした。複数をミックスすることでそれぞれのクセをおさえ、ハーブに慣れていない人でも食べやすい味に仕上げられていました。