「最終的なゴール(=目標)」をきちんと見極める
その後、何度かのコーチングを経て、手段を目標にしていたことを自覚したM選手は、球の投げ方を少しだけ工夫して、打者の打ち損じを狙うことにしました。
するとコントロールを意識しなくても自然と良い球が投げられるようになり、面白いようにアウトが取れるようになったと報告してくれました。
ここでのポイントは、「最終的なゴール(目標)は何か」をきちんと見極めることです。野球であれば、短期的なゴールは「相手チームに勝つこと」です。勝つために、ピッチャーは何をすれば良いのでしょうか。
そう考えると、自ずと答えは出てくるはずです。つまり、「目の前のバッターを一人ひとり抑える=アウトを取る」ことがゴールになるとわかります。
迷ったときは、会社、あるいは部署の目標を達成するために、「今、自分は何ができるのか」を考えるようにします。内容は、どんなに小さなことでもかまいません。仕事は、一つひとつの積み重ねでできています。小さなことを一つずつクリアしていくことが、大きな目標達成につながります。
脳のサーボメカニズム機能を利用する
“正しい”目標設定の必要性は、心理学や脳科学の面からも明らかです。自分や身内に子どもが生まれると、外出した際も子どもの存在に気づきやすくなるといいます。「急に子どもが増えた気がする」と思ったことはありませんか?
このような人の仕組みを「カラーバス効果」と呼びます。特定のものに意識を向けることで、脳が勝手に関連する情報をどんどん集める現象が起こるのです。また、脳には、自ら設定した目標に対して自動的に突き進む「サーボメカニズム」機能が備わっていると言われています。本人がその目標を心から目指すことで、脳が無意識にどんどんそこに向かって行動を起こさせようとけしかけるわけです。
先ほどの例で言うと、「速い球を投げること」を目標にしていたら、「速い球を投げるための方法」にばかり意識が向いてしまいます。しかし、「アウトを取ること」を目標にするとどうでしょうか。「アウトを取るための情報」がどんどん集まってくるはずです(もちろん、その中の一つに「速い球を投げること」も含まれるでしょう)。そして、様々な選択肢の中からベストなものを選ぶことができます。