一流のリーダーは目標をメンバーと一緒に考える
どこに意識を向けるかで、情報の集まり方は大きく変わり、パフォーマンスも大きく変わってくるのです。そのためにもリーダーは、メンバーが本質とは違う目標に固執していないか、見守ることが必要です。
自分を中心に考える「I目線」ではなく、相手の立場からものを見る「YOU目線」を意識しながら、メンバーの事情や気持ちを想像し、さまざまな角度から“正しい”目標案を検討してください。
仮に、会社のノルマで目標の数字自体は変えられなかったとしても、そこにたどり着くための方法やアプローチにおいて「YOU目線」を意識することで、メンバーの気持ちに寄り添った目標設定ができるようになるはずです。二流のリーダーは勝手に目標を設定して満足しますが、一流のリーダーは目標をメンバーと一緒に考えます。
目標達成のメリットとデメリットを整理する
「メンバーと一緒に立てた目標が本質的なものなのかどうか、判断しづらい」、そんなときは、その目標を達成するメリットとデメリットを、メンバー本人に聞くことをおすすめします。とくにこの方法は、一つの目標に固執しがちなメンバーに効果的です。
競艇選手のN選手は、“まくり差し”という戦法に強いこだわりを持っていました。競艇は、1レース6艇で行われます。ボートにはそれぞれ、1号艇~6号艇まで番号が割り振られています。この番号は、ピット(スタートライン)で待機しているボートに、コースの内側から順につけられるもの。競艇場の番組編成室が、レースごとに平等になるように番号を割り振っています。
6コースのうち、レースに勝つのは、ほとんどが1コースか2コースからスタートしたボートのどちらかです。インコースでスタートするほうが、最初のターンを最短距離で回ることができ、有利だからです。
ところが、私がコーチングをしていたN選手は、6コースから追い上げて勝つ“まくり差し”にこだわっていました。本来不利なアウトコースでも勝てるようになれば、どんなレースでも勝てるようになるはず――それが彼の言い分でした。
しかし、あえてそこにこだわるのは、競技の本質にかなっているとは言えません。そこで私はN選手と、まくり差しで勝つメリットとデメリットを整理しました。
・観客がレースを観ていてカッコ良い
・配当率も高くなるので盛り上がる
◆まくり差しで勝つデメリット
・アウトコースからまくり差しで勝てることは滅多にない
・まくり差しにこだわって3年以内にある程度の実績を残せなかった場合、契約を打ち切られてしまう(競技人生が短くなる恐れがある)