本場イタリアのように3皿ぐらい注文してほしい
このままではつぶれるという状況の下で、正垣氏が全メニューの価格を7割引きにしたところ、行列のできる人気店になった。これがサイゼリヤの成功体験の原点です。それ以後、顧客の満足度が価格を上回る設定で利益を生むためにどうすればいいのかを考えることが、サイゼリヤの企業文化の中心になっています。
さて、最初のクイズ問題の答えはそのような顧客心理にあります。サイゼリヤでは本場イタリアのように、お客さんが料理をたとえば3皿ぐらい注文していろいろ楽しんでほしいという考えでメニューを構成しています。
お客さんが値段を見ずに「ちょっと気になるメニューがあるので追加で食べたい」と注文する状態が理想だと考えた正垣会長は、「その国で最も売れている消耗品の価格」を値付けの参考にすべきだと考えたそうです。
消費者が使い捨てでも惜しくないと考えるモノの典型が週刊誌とタバコであることから、それをメニューの中心価格帯の参考にしたわけです。確かに理にかなった考え方ですね。
子供に人気の揚げ物をなぜ出さないのか
次に、サイゼリヤの「理にかなったコスト削減策」についての問題です。
そもそもイタリア料理のメニューには鶏のから揚げやとんかつはありません。「だから揚げ物がないのは当たり前じゃないか」というのはそれはそれで正しい考え方です。
ただ私の知っている本格イタリア料理店はとてもおいしいフライドポテトを提供しています。イタリア料理店のフライドポテトは油や調味料がアメリカ発のファストフードとはまったく違い、とてもおいしいものです。
ほかにもフライの上からチーズをかけた「コトレッタ」(=カツレツ)もれっきとしたミラノ料理です。揚げ物は子供にも人気ですから、消費者ニーズを考えたら導入するのはとても自然なことでしょう。
それに対してサイゼリヤ社長の堀埜一成は「手間がかかるからやらない」とインタビューで話しています。これはどういうことなのでしょう。
揚げ物を提供するための業務用のフライヤーは、一般家庭のシンクと同じくらいの体積の調理器具に油が張ってあるものです。このフライヤーの油は一日中フライを揚げているとどんどん酸化していきます。手入れをしなければお店中に油の酸化臭が充満してしまうのです。