芝麻信用の信用スコアは、所属企業や学歴や公共料金の支払いや所有する不動産や自家用車の情報で大まかなスコアが算出され、そのスコアをベースに買い物やサービス利用や対人関係で数値は微調整される仕組みになっているようだ。

LINEスコアは、芝麻信用に比べると粗が目立つ

個人向けの信用スコアは350点から950点までの幅があり、当然ながら点数が高いほど信用度が高い。

中国国内を拠点とするITライターの私の実感としては、芝麻信用やシェア(レンタル)サービスを全く意識しない人は500点台後半。少しレンタルサービスを利用する人は600点台。点数を意識して上げようとネットショッピングなどで精進し700点台になると、自慢できるスコアだという感覚だ。800点台はほとんど見かけない。

400点台以下にすることも理論的には可能だが、レンタル品を故意に破損させるなど、意図的に点数を下げるような行為をしないと出せない点数だと思われる。信用スコアには、こういった悪行を防ぐための抑止力もあるのではないか。

しかし、LINEスコアは、前述のように点数を上げるための都合のいい回答をすれば、虚偽でも簡単に高得点が得られるなど、社会システムとして機能している芝麻信用に比べると粗が目立つ。

光熱費や卒業生データベースや運転免許証番号など、官学データベースと連携もなく、どこまで正確なデータをとれるのか疑問が残る。また、LINEスコアでは子どもの人数や居住形態や年収など自己申告に依存する質問が多いが、中国で成功している芝麻信用にその項目はない。

現時点では、LINEスコアは利用者の性善説で成り立つスコアリングだといえる。しかし、性善説での運用では、クレジットカード番号を何度間違っても入力できたために不正利用の踏み台にされてしまったQR決済サービスの「PayPay」のように、悪意を持ったユーザーに利用される可能性は否定できない。また、サービスそのものも、現状ではキャッシングができてLINE Payポイント還元率が高まるだけであり、魅力的とは言い難い。

中国で信用スコアが普及した理由は、クレジットカードが普及していなかった部分をフォローしたことが大きく、加えてそれまでなかったレンタルや中古買い取りサービスを可能にしたり、ホテルや病院での煩雑な手続きを省略できるようにしたことにあると分析している。信用スコアによって有力なレンタル業者も登場するなど、新たな産業を創出する起点にもなっている。

つまり、中国では信用スコアが普及した理由が「社会問題の一部を解決し、社会を前に進めたから」といえる。現状では日本の信用スコアは知っていればお得になる程度であり、中国ほどの導入のメリットも、社会問題を解決する兆しも見られない。

LINEスコアが広く日本で使われるようになるためには、「普及させるため」ではなく、「人々が不便を感じていることを解決するために、何ができるのか」に焦点を当てる必要があるのではないだろうか。

(協力=網田和志)
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