今後の中国の宇宙開発をどう見るか

米国は中国との協力に関し、一般科学技術では積極的であったが、宇宙開発分野では一貫して否定的であった。米国と中国の宇宙技術力での比較はすでに見たように相当の格差があるが、現在の宇宙やサイバー空間における戦闘は必ずしも純粋技術だけで推し量れないことを米国が考慮しているからと考えられる。さらにトランプ政権となって、一般科学技術の米中協力についても否定的な動きが目立ち、宇宙開発での協力は当面考えられない状況となっている。

各国の宇宙開発を規定する国際的な取り決めとして宇宙条約があり、宇宙空間の領有の禁止や宇宙平和利用の原則などが定められ、主要国は中国も含めて全てこの条約に加盟している。しかし、この条約での制約はそれほど厳しいものではなく、また月や他の天体の探査活動や土地・資源の所有権設定などを規制しようとした月協定は、米ロなどの主要国の拒絶にあって死文化している。

中国はかつて2003年に衛星破壊実験を実施し、宇宙空間に膨大なスペースデブリを発生させた。衛星破壊実験そのものは宇宙条約の禁止対象ではなく、かつて米ロも実施したことがあるが、民生用の宇宙活動の活発化に伴い自粛してきた経緯がある。軍事利用を優先的に進めてきた中国は、宇宙空間での軍事的な優越性確保を念頭に、世界の宇宙開発にとってマイナスとなるような乱暴な行動をとる可能性は今後とも否定できない。

現在活動中の国際宇宙ステーションは、ソ連に対抗し西側諸国の結束を目指してレーガン大統領により構想されたが、ソ連崩壊を受けてロシアを参加させ、結果としてロシアの宇宙活動をある程度透明化させることに成功した。米国、欧州諸国、日本は、このような先人の知恵を活かして中国とも協調し、中国の宇宙開発の意図と現状をきちんと把握する努力を続ける必要があろう。

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