技術的には経験不足や未熟な点も見える
しかし、この打ち上げ回数が本当に中国の実力を示すものであろうか。図表1には失敗回数も示されており、ここ4年間の失敗数は米国ゼロ、日本およびインド1回、欧州2回、ロシア3回に対し、中国は7回となっており、技術的に安定していないことを示している。
もう一つ別の視点からの数字を示したい。図表2は現時点における主要国の現役主力ロケットの性能比較である。これで見ると、中国の長征3号ロケットは米国、欧州、ロシア、日本の主力ロケットと比較して見劣りがする。
実は図表2にある長征3号ロケットよりはるかに強力な長征5号ロケットを、中国はほぼ開発している。長征5号ロケットは、2016年に初号機打ち上げに成功したものの、2017年の打ち上げに失敗し2年半にわたって原因究明を行っていたが、昨年12月にようやく打ち上げ再成功にこぎ着けた。公表されている長征5号ロケットの性能は、5Bで低軌道打ち上げ能力が25t、5Eで静止トランスファー軌道打ち上げ能力が14tであり、この運用が定常化すればようやく米国などの現役主力ロケットの性能に追いついたことになる。
ただし、約50年前のアポロ計画で活躍したサターンVロケットは史上最強で、低軌道に118tと各国の現役ロケットの5倍程度の打ち上げ能力を有していた。米国の技術的優位性は歴然としている。
さらに現在までの宇宙飛行士の累計数を各国別にまとめた図表3をご覧いただきたい。宇宙飛行士累積数は宇宙有人活動の蓄積であるため、各国の有人活動能力の指標となる。これを見ると、中国は独自の有人宇宙飛行ロケットを有するとはいえ、米国やロシアとの実績の差は歴然としている。