「昨対比」で経営計画を作ってはいけない

もし、わが社の主力納入先が大手企業であっても、得意先の「市場の地位」がわが社の未来を決めてしまう。

例えば10年前にコンビニチェーンと取引していて、主納入先が1000店の本部だったとしたら、当時としては中小企業からすれば優良得意先を持っていることになる。当時でもセブン‐イレブンを筆頭に大手は強かったが、今日ほど寡占状態ではなかった。

ところが、市場が満杯になるにつれて上位3社の寡占化が急速に進み、わが社の主力納入先が、もし上位3社のいずれかによってM&Aされてしまったら……。

国内市場でみれば、自動車はT社系が圧倒的になり、ガソリン元売も2強、スーパー、ドラッグ、製鉄、セメント、都市銀行、家電と、本当に多くの業界で再編というキレイな言葉であるが寡占化が進行している。業界内で下位シェアの企業、すなわち「限界生産者」の将来は今どんなに利益が出ていても厳しいものにならざるを得ない。

そこにアマゾンに代表される黒船が世界中から上陸してきたのだから、一倉先生が40年前から警鐘を鳴らし続けている「昨対比の経営計画は絶対ダメだ!」を無視してきた企業はひとたまりもない。

ファーストリテイリングCEOの柳井正氏の口癖は「世界で3位内に入らなければ潰れる」だが、いつの時代も上位3社以内に市場は集約されてしまうのである。

「長期事業構想書」から逆算して短期計画を立てる

もうひとつ。例えば(3)の革新は、「長期事業構想」という書式一枚にまとめる。

長期事業構想書は、全社員に発表はするが固定的で定量的な長期計画ではなく、「客観情勢の変化と社長のビジョンの発展により、絶えず前向きに修正されなければならない」という注意書きがある通り、自社を高収益の事業構造に作り替えていくための考えを常に書き加えていくものである。

そうして、逆算として○○年後に、わが社をこう革新するために今期の単年度計画(短期計画)を立て実行に移していくのである。

だから、わが社の生き残りを賭けた戦いであり、先に書いた昨対比率での売上利益計画や、ボトムアップで出てきた数字をまとめただけの短期計画では一倉先生のカミナリが落ちる。「社長の職務怠慢、仕事放棄である」と徹底的にやられるのである。