プレゼン資料に組み込む“時限装置”とは?

プレゼン資料を一から作り直してみましょう(図表)。表紙に続く「カットイン」とは、顧客へのフック。気付きを与えたり、「こういうことをご存じですか」と聞いたり、脅しておいて「私なら救えますよ」と持ちかける「恫喝と救済」といった、いわば掴みです。

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プレゼンテーション資料作成

続いてメリットを記します。本当に言いたいメリットは一つでよいのですが、顧客側は現場から経営者まで、その立場によってメリットが異なりますから、各々を満たすものを幾つか加えます。顧客側の担当者が、上司、さらには経営トップを説得する際にこの資料を使わざるをえないよう、ネタをちりばめておくわけです。

クロージングは、プレゼン資料を使って行います。そのために、プレゼンの次のステップに進むための“時限装置”を資料に組み込んでおきます。例えば、購入するプロセスとその場合の必要期間を記しておいて、「10月から機械を稼働させる場合は納入が9月、そうすると8月までに契約が必要です」という具合に詰めていきます。これが顧客側のデファクト・スタンダードとなって、こちらの想定通りのスケジュールで事が運ぶのが理想です。契約に至るまでの期間の長短が、これで決まります。

会社概要は最後でいいでしょう。今は、知らない会社のこともすぐに調べることができますし、顧客にとってどの会社と付き合うかは、あくまで手段であって、1番最後に考えることです。


担当者が「社内を説得できる」資料を

資料を捨てられないためにあえてもう1枚入れるとしたら、競合他社との客観的な比較表でしょう。売れない営業は「うちの商品はこんなに凄い。お願いします」と言う。逆にトップセールスは、お願いはせずに「どれが御社に適しているか、選んでください」と投げてしまう。しかしメリットも説明し、比較もしているので、9割以上はこちらを向かせることができるのです。

要するに、担当者に「これを稟議書や説明で使えば、社内を説得できるなあ」と思わせる資料を作るのです。顧客に捨てられない、という視点を重視するのは、そういう意味合いからです。

社内向けのプレゼン資料もほぼ同じ作りです。付け加えるなら、「やらないリスク」を入れることと、誰もが当然と思っていることを改めてメリットに変換して書くことが重要。つい「メリットは皆が勝手に考えてくれるだろう」と考えがちですが、そう簡単ではありません。直接聴いた担当者が納得しても、上司、そのまた上司を説得することはできません。

ビジュアル面の留意点としては、とにかく文字が少ないほうがいい。その場のプレゼンか、後で読んでもらうものかによって違いますが、人は物事を文章では覚えませんから、キーワードのみ書いてそれだけ覚えてもらいます。図や写真も使っていいでしょう。私の経験上、手頃な分量は15枚程度。もっと少なければ少ないでいい。評判のいいプレゼン資料は薄い。これははっきり言えますね。

(西川修一=構成 鷹尾 茂=撮影)