プレゼン失敗の典型は、「商品の説明」
顧客相手のプレゼン資料を作成する場合、わかりやすく、うまく書こうとは考えても、「捨てられないようにしよう」という視点から準備する人はなかなかいません。1年間で何百というプレゼン資料を見ますが、そういう視点でいいなと思うのは1つか2つ。大半は自己満足です。
顧客に捨てられない資料には3種類あると考えています。まず、ためになる情報が載っていて、顧客に「もう1度読みたい」と思わせるもの。次に、顧客に「もう1度読まなければいけない」と思わせるもの。最後に、顧客が「もう1度使う」もの。私どもは3番目を1番意識しています。法人営業などで、顧客の担当者が稟議書を書く際に使う情報やデータが載っているものを想定しています。
プレゼン資料は、(1)何を言うか、(2)どんな順番で言うか、(3)どのように言うか、の3つを考慮して組み立てます。
まず(1)。できることを資料に並べ立てる営業マンが多いのですが、提案は“一撃必殺”。ヒアリングで顧客が求めるものの優先順位を絞り、その上位にくるものにきちんと刺さるように資料を組み立てます。自分に都合のいいところを勝手に1番と決めずに、顧客ごとに何を言うかをカスタマイズするわけです。
顧客のメリットが10ある場合、その優先順位のトップが満たされれば、残り9がダメでも顧客は満足します。逆に、残り9がよくてもトップがダメなら不満が残ります。会うたびに優先順位が変わる顧客もいますが、その際は「先日はこれが最優先と伺いました」と言いつつ落としどころを見つけていきましょう。
(2)については、顧客の胸のうちが「買いたい」「買わないとまずい」「買うと決めている」のどの段階にあるかによって、顧客の聴きたい事柄の順番は異なります。プレゼン中に顧客から資料の中身とまったく関係ない質問をされたら、それはプレゼンの内容が顧客が聴きたい順番とずれている証拠。これでは資料は用を成さず、質問を連発する顧客側に主導権を握られてしまいます。
顧客に考えさせない――これが(3)の大前提です。実は、営業マンが最も陥りがちな失敗は、商品の説明をしてしまうこと。「弊社の製品・サービスはこんなにいいんです」と連呼するだけでは、顧客が自分であれこれ考えないとメリットがわからず、“一撃必殺”で納得させることはできません。
極論すれば、商品の説明は不要です。商品はあくまで相手のメリットを裏付ける証拠でしかありません。営業マンにとって商品を売るのは目的ですが、顧客にとって商品購入は手段に過ぎません。このギャップを理解したうえで、「コストが2割削減できます。当社にはこういう新技術がありますから」などと、商品の特徴を顧客のメリットに変換して伝えることが重要です。
メリットには客観性が必要です。○%削減、○時間速い、などと数字で表現できなければなりません。競合他社も同様のメリットを持ち出すからです。ダメ押しで、商品を使った事例や顧客の感想があればより説得力のある資料になります。