新しい商品やサービスを企画していくうえで大切なのは、消費者が様変わりしている点を理解して、作り手・送り手本位から、消費者・受け手本位へ発想を180度転換していくことだ。そして、消費者好みの企画を立て、それを商品化し、消費者と“相思相愛”の関係を築いていく。企画を考えることは、大好きな女性にラブレターをどう書くのか、頭をひねることと相通じるところがあると思う。

様変わりした消費者の姿
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様変わりした消費者の姿

高度成長期の大量消費時代は「モノを買うこと=豊かな生活」で、モノは作れば飛ぶように売れた。「俺はこんな人間だよ」とアピールするだけで、その商品に魅力があれば、いとも簡単にモテたのだ。しかし、低成長期へ転換した現在では、「モノを買わないロハス的生活=豊かな生活」へと変化し、作り手は消費者からそっぽを向かれ始めたのである。

そうなった要因はいくつか考えられる。第一にネットの出現だ。以前は文化、流行、消費などの情報は、新聞、テレビ、ラジオ、雑誌の“4大マスメディア”によってトップダウンの形で伝えられていた。ところが、いまではネット上で消費者同士が、「ホントかな」「私はこう思うよ」などと批評し合い、情報がボトムアップされるようになった。その結果、作り手がどんなにいいことをいっても、消費者は素直に信じなくなってしまった。

また、携帯電話、Wii、iPodなどのメディアも登場し、消費者は情報洪水に呑み込まれた。総務省の「平成17年度情報流通センサス報告書」によれば、ここ10年はヒトが処理できる情報量は横ばいなのに、世の中に流れている情報量は410倍に急増。つまり、9割9分の情報を消費者は処理できない状況だ。

さらに、市場が成熟した影響も大きい。例えば、エアコンを売ろうとした場合、「暖める」「冷やす」という本質的な部分ではなくて、「お掃除が簡単」など本質以外の細かいところで勝負するようになっている。そんな状況を消費者もよくわかってきて、「どれも大して違わないだろう」と斜に構え始めたのだ。

つまり、新商品を企画し、商品化しても、広告という“求愛情報”はほとんど無視される。目にとまっても「どれも同じでしょ」と高を括られる。たとえ買ってくれても、使ってみた結果、手厳しい評価をネット上ですぐに交わしだす。以前のような「素直な消費者」から、「疑り深い消費者」へ様変わりしているのだ。