セルフ・ネグレクトの先にある孤独死の現状

東京都監察医務院で取り扱った「自宅住居で亡くなった単身世帯の者の統計(平成30年)」によると、東京23区内の自宅住居で亡くなった単身世帯の65歳以上は男性が2518人、女性が1349人と2003年以降過去最高となっています。

また日本少額短期保険協会の「孤独死の現状レポート(2016年3月)」によれば、東京23区内の65歳以上の孤独死者(賃貸住居内における)の数は、2002年の1364人から2014年には2885人と2倍を超える増加となり、遺体発見までの平均日数は男性で23日、女性で7日です。

以前私が委員長を務めたニッセイ基礎研究所の調査では、孤立死の要因の約8割がセルフ・ネグレクトでした。セルフ・ネグレクトの先には孤立死が待っているといっても過言ではありません。それがわかっていながら手を差し伸べられない今の法律や社会の壁が立ちはだかり、孤立死は増え続けているのです。

セルフ・ネグレクトに気づいたら

高齢化が進む日本では、今後、セルフ・ネグレクトから孤立死に至る人の数はさらに増えることが予想されます。こうした状況をふまえて、各地域の民生委員は一人暮らしの高齢者への訪問活動を行ったり、行政では見守りボランティアを養成したりするなど、高齢者の見守りに力を入れています。また地域包括支援センターは高齢者の支援を、保健所・保健センターでは精神疾患や障害を持つ人の支援を行っています。

しかしセルフ・ネグレクトは当人がSOSを出さないため、発見することが困難であることと、発見した時にはすでに孤立死していたり、病気が重症化したりしていることがあります。また予算や人員に限りがあるので、行政がさまざまな機関と連携して対応しているこのの、一人ひとりに細やかな対応をすることはできません。

そこで必要になってくるのが親族や知人の協力です。

セルフ・ネグレクトの人のほとんどは他者に心を閉ざしていますが、子どもやきょうだい、友人なら心を開くことがあります。実際、親族や友人の説得によりゴミを捨てるようになったり、医療機関を受診したりするというケースは多いのです。

仮に家族や親族では説得が難しくても、本人の情報を民生委員や地域包括支援センターに伝えれば、何らかの支援につなげてもらうことが可能です。

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