明確に生きる意欲がわかないと自覚するというより、「面倒くさい」「もうどうなってもいい」という気持ちが、やがて生活の破綻をきたし、数カ月後にはごみ屋敷になっていきます。

多くは一人暮らしの高齢者で、いくつかの調査では男性が多いという結果もありますが、男女差は明確ではありません。また最近は引きこもりの長期化・高齢化に伴い、50代から60代の引きこもりの人の中に、セルフ・ネグレクトに陥る人がみられ、8050問題と言われています。

セルフ・ネグレクトというと、一人暮らしというイメージを持たれますが、家族がいても家族からネグレクトされた結果、セルフ・ネグレクトに陥る人もいます。最近は母子世帯等で母親が病気などで家事や育児ができないために、ゴミ屋敷で家族で生活し、家族ごと孤立しているという場合もあります。

誰にでも起こりうるセルフ・ネグレクト

セルフ・ネグレクトになるきっかけはさまざまですが、認知症やうつ等の発症で生活が困難になったり、年老いて足腰が弱り体を動かすのがつらくなったり、配偶者に先立たれ一人で生きていくのが面倒になったり、経済的に困窮し希望が見いだせなくなったという人などがいます。また日本人、特に高齢者に多いのは、プライドが高い人、また人から世話を受けることに遠慮がちな人がなりやすいようです。

それまではごく普通に社会生活を送っていた人が、病気やライフイベントなどがきっかけで起こりますから、誰もがセルフ・ネグレクトになる可能性があるのです。ただ、一つの出来事がきっかけで起きるというよりは、いくつかの要因が重なって起こることがあります。次に、よくあるケースを紹介しましょう。

①夫と死別し体を悪くしたA子さん・78歳
5年前に夫と死別し一人で暮らしていたA子さんはきちんとした性格で、毎日家の掃除と庭の手入れをしていました。ところが2年前に膝を悪くしてからは歩くのがつらくなり、掃除やゴミ出しが大きな負担になりました。気がつくと、家の中はゴミが積み重なり、庭も荒れ放題になってしまいました。そのころから近所の人との交流もなくなり、家に閉じこもる生活が続いています。