職員が高齢化するほど人件費は膨らむ

周知の通り、公務員にリストラはない。懲戒免職や分限処分による退職という制度はあるが、これは犯罪を犯した場合や、よほど勤務態度が不良な場合だけで、実際にはクビになっている人の数はごく少数だ。逆に言えば、財政を立て直すために職員の数を減らすといった民間企業では当たり前のことが、地方自治体には許されていないのだ。そんな中で、人件費を抑える切り札とも言える存在だったのが、非正規公務員だったわけだ。

正規職員は毎年年齢が上がるごとに給与が上昇する。俸給表に従って勤務年数が増えれば給与も上がっていく仕組みになっているのだ。クビにもできず、給与は上がるので、放っておけば自治体の人件費は高齢化とともに毎年膨らんでいく。

「高齢の正規職員の給与を増やすために、非正規を増やして人件費総額を抑えている」と、ある政令指定都市の「特別職非常勤」という立場の職員は憤る。人件費を賄うための財源である地方税収や国からの交付金が増えない限り、増え続ける人件費を吸収することは簡単ではない。

正規職員を増やす負担は、若年層にのしかかる

しかも国は、国家公務員の定年を現状の60歳から段階的に65歳に引き上げようとしている。当然、地方自治体にも「右へ倣え」を求めてくる。定年が延びれば、当然、その分、人件費負担は増える。今後これをどう賄っていくのか。

2008年をピークに日本の人口は減少し始めており、地方での人口減少は深刻さを増している。一方、高齢化などで福祉など地方自治体のサービスへの要望は高まっており、住民が減ったからといって、正規職員を大幅にカットすることも難しい。2017年までの10年間で地方公務員の数は6.6%、17万人近くが減ったが、そのうちの半分の9万人弱は少子化などに伴って減らされた教員など教育関係者。一般行政職員は2013年ごろまでは減少が続いたが、それ以降、むしろ増加傾向にある。

第2次安倍晋三内閣以降、景気が回復し足元の地方税収が増えたとはいえ、人口減少に伴う税収減を考えれば、簡単にはクビにできない正規の地方公務員を増やすことは危険ではないか。その負担は働く若年層に重くのしかかるのだ。