景気が悪くなる兆候を探るには

──そうした景気の切り替え時期をどのように判断されるのですか。

【似鳥】私は基本的にマイナスのときこそ、チャンスがあると思っています。景気が良いときにも、悪くなるときをじっと待っている。だから、景気が悪くなるのはいつか、その兆候を探るのです。

例えば、08年のリーマンショックのときも、その前年に住宅価格が2~3倍になるという非常に危険な兆候がありました。私は世界経済の動向やIMFの指標も見ながら、日本とアメリカを行ったり来たりして、現場に足を運んでいます。部下に行かせるのではなく、トップ自らが行かなければいけません。現場で実際に調査をして、現実を知ることで初めてわかることがあるのです。

──日本経済の景気判断材料として常にチェックしている指標は何ですか。

【似鳥】私は景気の先行指標として「新設住宅着工戸数」を重視しています。建築が増えると住関連商品や家電などの消費も増えるため、関連する企業の景気に大きく影響するのです。08年のリーマンンショックのときも先行して動いていました。例えば、04年は約119万戸、05年は約124万戸、06年は約129万戸と推移していましたが、07年に約106万戸と大きく減少していたのです。新設住宅着工戸数は、人口の1%に当たる120万戸以上が景気の良い状態とされます。リーマンショック以降は、100万戸が一つの目安ですね。19年の予測は86~91万戸と下降気味で、20年は80万戸台、24年以降は70万戸台になると予測されています。

前の東京五輪は不況の始まりだった

──東京五輪後は不況がやってくると言われています。会長は「過去にあったことは必ず起きる」という考えを持っているようですが、未来を考えるに当たって、歴史を参考にすることは多い?

【似鳥】景気循環においては、過去と同じ現象が繰り返されます。1964年の東京五輪後も、不況の始まりでした。その意味で言えば、東京五輪以降、土地や建物、鉄をはじめとした原材料価格も下がっていくでしょうし、人材も買い手市場になっていくはずです。これは過去50年以上、ビジネスの経験で得た私の知見です。

──「20~30年後を予測して、そこで成果が出る投資を行うべきだ」とも提言されていますね。30年後を予測する目を養うにはどうすればいいでしょうか。

【似鳥】わが社は1店舗30坪100万円からビジネスを始め、今では年間6000億円の売上高を超える企業となりました。成功の秘訣は逆張りです。不況のときこそ投資して、好況のときはあまり投資しない。投資が大きいと不況になったときに大きな負担になります。経営者は常に未来を見ることが必要です。

そのためには常に景気動向に着目し、その原因と結果を分析する習慣を身に付けないといけません。短期で目標を立てるのではなく、少なくとも10年先の計画を立て、そこから逆算して現時点でどんな手を打つべきなのか。どんな投資が必要なのか。それを常に意識することが重要なのです。

※本稿は「PRESIDENT」誌2020年1月17日号の記事の一部を抜粋したものです。続きは本誌でお読みください。
※同記事の39ページに「年間64億円の売上高を超える企業」とある表記を「6000億円」に訂正いたします。

(構成=國貞文隆)
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