私は昔から勉強が大の苦手で、高校生の頃は成績が60人中58番目。下にまだ2人いましたが、カンニングしてその順位でした。そういう男ですから、1967年に家具店を始めたときも経営の勉強はまったくしませんでした。ヒト、モノ、カネ、すべてが自己流です。そのせいか失敗ばかりで、悩みは尽きることがなかったです。
そんなときに出合ったのが、チェーンストア理論の第一人者、渥美俊一先生の本でした。旭川のメーカーまわりをしていたとき、ある会社の応接室に1冊だけ置いてあったのです。何気なく手に取ってみたら、日頃の悩みに対する答えがすべて書いてあって、目からうろこが落ちる思いでした。
衝撃を受けたのは、チェーンストアの店舗数です。当時は「5店舗以上になると社長の目が届かなくなって倒産する」というのが店舗経営の常識でした。ところが、渥美先生は「最低11店舗なきゃチェーンストアじゃない」という。そういう世界があるのかと驚きました。読めば読むほど、もっと知りたいことが出てきます。そこで渥美先生が主宰する「ペガサスクラブ」に入って教えを乞うことに決めました。
しかし、34歳の頃にペガサスクラブに入ってからも、劣等生でした。渥美先生は「経営は科学。数字を入れて話しなさい」といいます。それなのに、私は基本的な自社の経営の数字ですら頭に入っておらず、何を聞かれてもまともに答えられない。よく怒られて、会話を打ち切られていました。
研修やセミナーでは、渥美先生の言うことをとにかくノートに書きました。お話が上手だから、つい聞き惚れちゃう。そうしていると「聞くだけだと忘れるだろう。メモを取れ」と叱られ、必死にノートに書くわけです。でも、書いたものを後で読み直したりしないから、結局、頭に入らない。セミナーの最後に確認のテストがあるのですが、やっぱり成績はよくなかったですね。
一度聞いても覚えないし、書いても読み直さない。仕方がないから、苦肉の策で同じセミナーに何度も出ました。一度だけでは忘れてしまう内容も、二度三度と聞けばさすがに覚えます。また、学んだ内容や取り組むべき課題は、意識して人に話すようにしました。言えば実行せざるをえなくなります。