歯周病は命にかかわる

井上裕之『「歯」を整えるだけで人生は変わる』(日本実業出版社)

できるビジネスパーソンには先を読む力があり、今起きている問題を軽視せずにきちんと向き合おうとする姿勢があります。だからこそ、進行すれば最終的に歯が抜けてしまう可能性のある歯周病に対しても、抜かりなくメンテナンスをしている人が多いのです。

そういう人は、歯周病のもうひとつの暗黒面を知っています。それは、歯茎の病気である歯周病が「命にかかわる重大な疾患を誘発する」ということです。

歯周病は、まさに「サイレントキラー」。無自覚のまま進行し、ある日突然命にかかわる病気を引き起こす可能性があります。

では、歯周病になることで、どんな病気にかかりやすくなるのでしょうか。

・心臓病

心臓は体中に血液を巡らすポンプであり、人間が生命活動を維持する上で欠かすことのできない臓器です。その重要性は説明の必要もないでしょう。

心臓に血液を供給する動脈を「冠状動脈」と言い、それに起因する心臓病を「冠状動脈性心疾患」と呼びます。そのなかでも、血管の中に“プラーク”と呼ばれる沈着物が作られて、血管が狭くなったり詰まったりすることによって起こる病気があります。心臓のポンプ機能が働かなくなる心筋梗塞や、心臓に血液が供給されなくなる狭心症などの「虚血性きょけつせい心疾患」です。

井上裕之『「歯」を整えるだけで人生は変わる』(日本実業出版社)より

最近、この虚血性心疾患の原因となる血管内沈着物の形成を促進するのが、歯周病原性細菌なのではないかと考えられるようになってきました。

歯周病に罹患している人の、これらの病気の発症リスクは、歯周病を持たない人に比べて15〜20パーセント高まると言われています。

・脳血管疾患(脳梗塞)

心臓の病気と同様の理由から、発症が心配されるのが脳梗塞です。

脳梗塞とは、脳の血管にできたプラークが詰まったり、頸動脈や心臓から、プラークや血の塊が飛んできたりして、脳血管が詰まる病気です。歯周病の人はそうでない人に比べて、なんと2.8倍も脳梗塞になりやすいと言われています。

すでに血圧やコレステロール、中性脂肪が高く、脳血管疾患の発症リスクの高い人は、特に歯周病の予防が重要です。