舞台は、東京の「下町の総合病院」
本書の舞台は、東京の「下町の総合病院」だが、自身は若い頃、東京都文京区の駒込病院に研修医として勤めた。
「癌の専門病院だったので、患者さんが亡くなるのは日常的なことでした。人って、こんなにすぐ死んじゃうのかと。死の間際に精神的な苦痛をもって亡くなる人も数多く見ました。それって何とかならないのかという思いはずっと持っていた。そういう思いを、今は癌でもないし、死に直面しているわけでもない人たちに伝える方法はないのかと」
患者の「生きる」「死ぬ」の線引きをしなければならない側面が医師にはある。
「この人に『手術をする』と決めたら少し長く生きられるかもしれない。でも『しない』と決めたら3カ月で必ず死ぬ。その意思決定を、会議をしてみんなで決めるということが日常茶飯事です。でも、それって答えをはっきりと出せるものではないと思う。神様にしかわからない領域もたくさんある。そういう混沌とした現場だということは、お伝えしたかったんです」
同業の医師からは「苦情に近い感想」が時に寄せられるという。「途中から読めなくなった。吐きそうになった。これが二大感想です。あまりにリアルで、自分の話かと思ったと。でもそれは、私には最高の褒め言葉です」。
1980年生まれ、神奈川県出身。鹿児島大学医学部卒。2017年、福島県広野町の高野病院院長を経て、郡山市総合南東北病院外科医長。