珍主張1:「私のテレビを返しなさい」

別れた内縁の妻に対する脅迫やストーカー行為で捕まった元タクシー運転手の40代の被告人は、犯行を否認。渡した生活費を好きなことに使われた、浮気をしていた疑いがあるなど、迷惑を掛けられたのは自分のほうだから、抗議するのは当然で、犯罪には当たらないと一歩も譲らない。自分は別れることが嫌だったのではなく、同棲する際に自費で購入した家具を返してほしかっただけだと主張した。

元妻は勝手にテレビを持って行った。尾行したり、元妻の勤務先に大量の誹謗中傷ファクスを送りつけたりしたのも、抗議を無視されてやむなく行ったことで、被害者はむしろ自分のほうなのだ、どう考えても自分は正しい、と言い張るのである。

「あのテレビは私のものです。それを元妻は勝手に持ち出した。人のものを盗んだら返すのが当たり前でしょう。私は何十回も、テレビを返せと留守電にメッセージを残しましたが返事がない。この事情を元妻の勤務先に伝え、上司から返すように言ってもらおうと考えるのは当然じゃないですか。私はテレビがないと困るんだから」

だからといって嫌がらせをしていい理由にはならないのだが、被告人は独自の理論をネチネチと展開するのだった。

「大型画面の最新式だったんです。私が買ったんです。私のものなんだ!」

主張は認められず、あえなく有罪となった。

珍主張2:「(結婚)相手は東方神起のメンバーの方です」

かつて不倫関係にあった男に「あなたが私にしたことは結婚詐欺」だったからと1700万円を要求し、脅迫未遂で捕まった40代半ばの女性の主張は一風変わっていた。動機について、韓国のアイドルとの結婚話があり、身元を調査されているので、過去を清算する必要があったというのである。

「相手はシム・チャンミンさんです。東方神起のメンバーの方です。で、私も昔のことにけじめをつけようと。(不倫関係にあった男に)だまされたという思いもありましたから、ちゃんとした話をしたかったんです」

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被告人は妄想に取りつかれているようだった。

「(男性被害者との不倫は)シムさんの親族から調べられたようです」

お構いなしに話を続ける被告人だったが、話の内容は支離滅裂で信ぴょう性がない。こういうケースはときどきある。有罪は動かないとしても、実害はなかったのだから、執行猶予付き判決にして精神科で治療を受けさせるのがいいのではないだろうか。傍聴席はそんな空気だった。いくら検察が内容のおかしさを指摘しても、被告人は笑顔でこう答えるのだ。

「シムさんに聞いていただければ、すべてがわかるはずです」