「数年先には雇用に影響が出るようになるでしょう」

一方、生産部門の効率化で期待されているのがIoT(モノのインターネット)だ。岩本上席研究員はこう話す。

「基本的にIoTの機能は製造ラインなどの業務の“見える化”であり、見える化しただけでは雇用に影響しません。今は見える化し、人間がその原因を追究し対策を講じている段階ですが、その部分にAIを導入し、人間に置き換わるようになれば雇用に影響が出ます。それも数年先に訪れるでしょう」

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三菱総合研究所の「内外経済の中長期展望2018~2030年度」によると、日本の人材は生産・運輸・建設職や販売・サービス職など「手仕事的なタスクでルーティン業務に従事する人」が2450万人、一般事務・営業事務・会計事務などの「分析的なタスクでルーティン業務に従事する人」が1880万人。それに対して技術職・研究職、金融・保険専門職など「分析的なタスクで非ルーティン業務に従事する人」が900万人いるという。

事務職は2020年代前半から過剰になり、2030年には120万人が過剰

現在は生産・輸送・建設職や販売・サービス職は人出不足の状態にあるが、AIなどの活用で徐々に緩和され、事務職は2020年代前半から過剰になり、2030年には120万人が過剰になると予測する。少し遅れて生産職はIoTやロボットによる自動化で顕在化し、30年に90万人が過剰になり、逆に技術革新をリードする専門職人材は170万人が不足すると予測している。

現時点ではRPAの雇用への影響で注目されているのがメガバンクの人員縮小計画だ。3行合計で3万人超の業務・人員を削減する方針を打ち出している。ただし3行ともリストラはせず、バブル期入社組の退職減や新規採用抑制による自然減で最適化を図るという。

損害保険ジャパン日本興亜もITの活用で2020年度末までに国内損保事業の従業員数を新卒採用抑制や配置転換などで4000人減らす計画を明らかにしている。

希望退職募集などリストラはしないといっているが、それは正社員であり、真っ先に影響を受けるのは非正社員だろう。