不必要なリンパ切除はしない方向に
また、手術に関しては縮小化が進む。2010年4月には、センチネルリンパ節生検が保険適用になった。腫瘍や乳房の大きさにもよるが、乳房温存治療が主流になっているばかりか、センチネルリンパ節生検を行うことで、不必要なリンパ節切除はしない方向になってきているのだ。
センチネルリンパ節は、「見張りリンパ節」とも呼ばれる。手術中や手術前にこのリンパ節のみ切除して病理検査を行い転移がなければ、その先のリンパ節にも転移がないことがわかっている。以前は、原則的にわきの下のリンパ節はすべて切除されていたので、腕がパンパンに腫れて上がらなくなる「リンパ浮腫」という後遺症に悩まされる患者が多かった。不必要なリンパ節切除をなくし、後遺症を減らすために開発されたのが、センチネルリンパ節生検だ。
先進的な病院では、10年ほど前から行われている生検だが、この検査が行えない病院もある。手術を受ける病院を選ぶときには、センチネルリンパ節生検を受けられるかどうか確認する必要がある。
最近では、遺伝子検査の進歩で、特定の遺伝子に変異があるために、乳がんと卵巣がんになりやすい人がいることがわかってきた。
そういった遺伝子変異を持っている人は、乳房を残すと再発の恐れがあるので、温存治療は避けたほうがよいといわれる。今のところ、遺伝子検査は保険外で高価だが、遺伝子レベルの検査で治療法の選択肢が変わる時代が到来しつつある。
乳がんは手術後も10年は経過観察を続ける必要があり、担当医や病院とは長いつきあいになる。担当医と信頼関係を築き、納得のいく治療を受けたいものだ。
※すべて雑誌掲載当時
※ランキングは1607病院のDPCデータを使用。2009年7~12月の6カ月間の退院患者についての治療実績。「―」は10例未満、または分析対象外とされたもの。