ふつうのことに疑問を持つ
あなたの目の前に、ハエがブーンと飛んでいるとします。誰しも「近寄ってくるな、あっち行け」と思うでしょう。ところが、ダ・ヴィンチがハエを見て思ったのは、「このブーンという音は、どこから発生しているのか?」でした。
ハエという存在自体に関心を持たなければ、この疑問は出てきません。そしてダ・ヴィンチは、観察と実験によってそれが羽から生じていることを突き止めたのです。発見は観察から、観察は疑問から生まれます。
海を越えた異国の地、ギリシャのパルテノン神殿を思い浮かべてみてください。真っ白な柱に支えられた白亜の殿堂をイメージするでしょう。ところが、そのパルテノン神殿に疑問を感じた人がいました。「パルテノン神殿は、本当に最初から真っ白だったのか」と——。
そこで、波長の異なる光を当てて科学的な調査をしたところ、実は極彩色のカラフルな神殿であったことが判明しました。この発見によって、「神殿=白」というイメージが覆されます。しかも、神殿だけではなく、白い銅像にまでカラフルな彩色が施されていたのです。
皆が当たり前、常識と思っていることを疑い、関心を持つことで、新たな視界が開けてくるのです。
「なぜ」を5回以上重ねろ
ダ・ヴィンチ研究の権威であるケネス・クラークは、ダ・ヴィンチを「歴史上、最も強烈な好奇心を持った男」と評しました。ダ・ヴィンチの関心は、次の2つに大別できます。
①世界はどのようにできているのか
②人間はどのようにできているのか
世界の成り立ちを明らかにするために、植物学、地質学、天文学を学んだダ・ヴィンチ。次にその世界に生きている人間に関心を持ちました。外側に広がった好奇心が、内側に向き始めたのです。