「万能の天才」と称されるレオナルド・ダ・ヴィンチ。だが、そんな天才にも「3つの欠点」があり、劣等感に悩むこともあった。生粋のダ・ヴィンチ研究家は「万能の天才も現代人と同じような悩みを抱えていた。ただし、その悩みの解決法が私たちとは違う」という——。

※本稿は、桜川 Daヴィんち『超訳ダ・ヴィンチ・ノート』(飛鳥新社)の一部を再編集したものです。

写真=Mondadori/アフロ
ルネサンスの「万能の天才」、レオナルド・ダ・ヴィンチが残した膨大なノートの一つ、「アトランティコ手稿」の一部。左右が逆転した鏡文字で書かれている。ミラノ・アンブロジアーナ図書館蔵。

堂々と劣等感を持つ

「この男は大バカ者だ……言ってくれ、サンドロ、君はどう思う? 本当のことを正直に言おう。僕は成功しなかったのだ」(アトランティコ手稿)

「僕は成功しなかった」——ダ・ヴィンチの言葉とすれば、あまりにも意外と言っていいでしょう。万能の天才。きっと何事もすんなりうまくいったに違いない。そんなイメージとは裏腹に、劣等感を解消するために努力するという泥臭さこそが原点だったのです。

ただし、単に自己卑下していたわけではありません。自分が今、社会の中でどこに位置しているのか、現状を客観視していました。

「サンドロ、君はどう思うか」のサンドロとは、貝殻の上に立つ女神を描いた『ヴィーナスの誕生』で有名な画家、サンドロ・ボッティチェリのことです。ボッティチェリはダ・ヴィンチより7歳ほど年上で、同じ工房で働く先輩でありライバルでしたが、ダ・ヴィンチに劣等感を抱かせた「ある決定的な出来事」がありました。

システィーナ礼拝堂の壁画制作プロジェクトに画家が選ばれ何人か招集された際、ボッティチェリは選ばれましたが、ダ・ヴィンチの名はありませんでした。最高に栄誉があり報酬も莫大ばくだいだった仕事を逃したダ・ヴィンチの落胆は計り知れません。でも、そんな自分の現在地を認め、前に進む道を選んだことが、晩年、偉大な芸術家となったダ・ヴィンチのスタートラインだったのです。

欠点は無視して、裏側にある長所を伸ばせ

「鉄は手入れをしないとさびてしまう。水は放置されると腐り、冷え込むと凍る。同じように、才能も使わなければダメになってしまう」(アトランティコ手稿)

師匠が認めるほど絵が上手だったのに、システィーナ礼拝堂の壁画制作プロジェクトに落選したダ・ヴィンチ。その原因は次の「3つの欠点」にありました。

①遅筆
②未完成作品が多い
③指示を無視する

絵を依頼したのに、納期を守れない。だいぶ描いたかと思ったら、完成させることができない。完成したかと思いきや、依頼した内容が反映されていない——こんな最悪の3拍子がそろった人に誰も仕事を依頼しませんよね。