人気プレゼンの文章の約15%が質問や問いかけ

3つ目の極意は「対話」だ。残念ながら、今モーターショーでのプレゼンでも、自分が話したいことだけを一方的に話すモノローグスタイルが99%を占めたが、聴衆を巻き込む「対話性」を強く意識したものも、散見された。豊田社長のプレゼンでも、「いかがでしょうか」「ワクワクしませんか」という問いかけがいくつも入っていた。

写真=AP/アフロ
東京モーターショー2019

あるアメリカ人ジャーナリストがTED TALKの最も人気のある上位25のプレゼンテーションを分析したところ、3つの特徴があったという。

笑いをとっていること、拍手や歓声を集めていたこと、そして、問いかけが多いこと。

「?」の数を数えたところ、579あり、ピリオド、つまり日本語の「。」は3910だった。「。」で終わらせる文が6に対し、「?」で終わる質問や問いかけを1、つまり約15%の割合で、質問や問いかけを入れるといい、ということだ。聴衆を置き去りにせず、まるで会話や対話をしているようなプレゼンがグローバルスタイルということだ。

「2019東京モーターショー」プレゼンテーションベスト3発表

最後に、筆者が独断と偏見で選んだ「2019東京モーターショー」のプレゼンテーションベスト3をご紹介しよう。ランキングは、筆者独自の評価メソッドに基づき、声やボディランゲージ、演出やメッセージ性、個性やエネルギーなどといった指標を数値化して算出した。

第3位:
ホンダ・八郷隆弘社長
スピード感、ジェスチャー、柔らかい表情、抑揚など抜群の安定感。

第2位:
日野自動車・下義生社長
スクリーンに登場する未来の社長と今の社長との対話というユニークな趣向の演出。豊かな表情とジェスチャーで若々しさと躍動感が伝わる。

第I位:
トヨタ自動車・豊田章男社長
相変わらずの突き抜け感。「道化」に徹し、高いエネルギーで、未来社会のワクワクを体現する。

敢闘賞:
マツダの竹内都美子主査
数少ない女性のプレゼンターとして登場。堂々と、そして情感をこめたパフォーマンスで見事に大役を果たした。

いかがだろうか。たかがプレゼン、されどプレゼン。トップ自ら体を張って、「恥をさらす」覚悟があるかどうか。そこから見えてくるのは社風であり、風通しのよさであり、変革の機運なのである。

関連記事
トヨタ「ライバルはもうホンダではない」の真意
トヨタがわざとガタガタの車を作った理由
なぜ「利益を優先しない経営」で成功したのか
未だ体育会系が採用されやすい意外な理由3つ
人生に効率主義で挑む「意識高い系」の残念人生