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生産性の向上にこそ取り組むべきだ

——昨今の働き方改革についてはいかがでしょうか。

【宮内】現在の働き方改革は残業時間の削減ばかりに焦点が当てられ、「仕事を早く切り上げて家に帰ろう」というメッセージにとどまっている気がします。政治家が有権者にアピールするために、「働き過ぎはよくない」と訴えるのは、ある意味、理解できます。私が違和感を覚えるのは企業側の反応なのです。

企業の人事担当者は法に抵触することのないよう、社員の労働時間、残業時間、休暇の適正取得に追われているように見えます。しかし、働き方改革の本質はそこなのでしょうか。

日本の産業構造はいつの間にか第3次産業がその7割を占め、それが日本経済の中核を担っているわけですが、その生産性が欧米に比べると著しく低いことをご存じでしょうか。米国の第3次産業の生産性を100とすると、日本の小売業は24、飲食業は30しかありません。

働き方改革において企業がまっさきに取り組むべきは、この低い生産性をいかにして向上させるか、ということのはずでしょう。それを後回しにして、労働時間だけを短くしたら、企業の業績は低下してしまいます。必然的に、働く人の賃金も低くなります。そうなると消費意欲も衰えますから、経済全体のパイ、GDPが小さくなってしまう。それではみんなが困ります。

早く帰るのは結構、有休を多く取れるようにするのももちろん結構です。でもそうやって労働時間を短縮するのであれば、産業界をあげて生産性の向上に取り組まなければならない。あらゆる経営者はこのことを肝に銘じるべきです。

(文=荻野 進介)
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