中学棋士だった藤井聡太七段は、かつて「授業をきちんと聞いているのに、なぜ宿題をやる必要があるのですか?」と発言した。麹町中学校の工藤勇一校長は「宿題の目的は『こなすこと』ではない。わからないものを理解するのが本当の目的だ」という――。
※本稿は、工藤勇一『麹町中学校の型破り校長 非常識な教え』(SB新書)の一部を再編集したものです。
藤井七段「なぜ宿題をやる必要があるのですか」
「学び」とは、わからなかったことがわかるようになったとき、できなかったことができるようになったときにはじめて成立するものです。その点、すでにわかっていることを宿題として課しても、子どもがそこから学べることは限定的なものになってしまいます。
すでに中学棋士だった藤井聡太七段が、教員にこう聞いたことが話題になりました。
「授業をきちんと聞いているのに、なぜ宿題をやる必要があるのですか?」
その後、担任が宿題の意義を説明して、納得した後は取り組んだそうですが、将棋の世界ですでに自律した考えを持っていることが、こうしたやり取りからもうかがえます。24時間という限られた時間の中で、少しでも将棋の時間をつくりたい。そう思っている彼にとって、将棋の時間を奪う無駄な宿題は減らしたいのでしょう。彼の心の声が聞こえてきそうです。
もし先生が子どもに宿題を課すのであれば、着目すべきは「学び」の瞬間を子どもが体感できるものであるかどうか。そうしないと子どもの貴重な時間を無駄に奪うだけでなく、勉強嫌いの子どもを増やす要因になる危険もあります。