「位が人を作る」といいますが、そういう意味では違うと思います。位が人を“狂わせる”のです。とてもよい方向に狂わせることもあれば、悪い方向に狂わせることもある。一般論でいうと、日本人はトップになると、守りに入る人が多い気がします。
一方、アメリカではトップになった途端、より短期思考に陥りがちです。四半期ごとに株主からの厳しいチェックが入りますし、株価連動報酬をもらっている経営者も多い。「経営者の仕事は株価を上げることだ」というシステムが出来上がっているわけです。一方の日本の経営者は、不思議と株価にはあまり関心がない人もいます。どちらも極端で、その中庸を目指すのがよい経営者なのでしょう。
——オーナー系の中小企業の場合、人材が枯渇しがちで、経営を息子や娘に事業を継がせるケースがよくあります。これについてはどう考えますか。
【宮内】「継がせると決めない」ことが最善の策だと思っています。私が知る範囲では、家族内の承継ではうまくいっていないケースのほうが多いように思います。創業して成功した初代の子供に、同じように経営の才能が備わり、同じように優秀な事業家に育つ確率だけに賭けるより、内外から、次の経営者にふさわしい人材を広く求めたほうが、事業承継が成功する可能性がぐっと高まるはずです。
オリックスは私個人の会社ではありませんが、私の息子には「お前はオリックスには入れないぞ」と言ってきました。今になって聞くと、「中学生の頃からおやじにはそう言われてきた」と言っています(笑)。
組織で動け、組織図で動くな
——企業の組織作りにおいて大切なことは何でしょうか。
【宮内】組織を平面で見るのではなく、立体的に見ることを心がけてはどうでしょう。いわば円錐型として組織を見るのです。
多くの社員は自分が所属する部署と、それに関係した部署にしか関心を示しません。しかし、そうした社員ばかりだと会社組織はうまく回っていきません。たとえば、本社の営業部と関連会社の営業部とは、業務上の密接なつながりがあるケースが多いのですが、情報を共有せずに顧客を囲い込んだりする。そんな例が各社で山ほどあるはずです。一つの企業体である以上、あらゆる部署が有機的つながりをもって動くべきなのです。
それを認識してもらうには、経営者は円錐型で組織をとらえ、その見方を社内に浸透させなければなりません。さまざまな部署が互いに接しながら積み重なり、会社という円錐が成立している。平面の組織図ではなく、そんな組織像を社内で共有してほしいのです。私はよくこう言っていました。「組織で動け、組織図で動くな」と。