モノマネをする経営としない経営
——最近の日本の企業経営を見て、どのような印象をお持ちでしょうか。
【鈴木】今はコンサルタント全盛時代です。ところが、コンサルタントの実態はといえば、実務の現実をよくわかっていない人たちが実務についてアドバイスしているケースがよく見られます。アドバイスは、たいてい他社で成功している事例を持ってきて適用させようとするものです。そのアドバイスや提案にしたがっても、モノマネにすぎませんから、結局、二番手、三番手以上にはなれない。危惧されるのは、多くの経営者がそれに依存している傾向が見られることです。
モノマネをする経営としない経営、どちらがいいか。モノマネをするほうが楽なように思えますが、モノマネは進む道が制約され、差別化できないまま、やがて過当競争に巻き込まれるだけです。今の日本は柳の下にドジョウが1匹いるかいないかの時代です。どこにドジョウがいるか自分で探して、自己差別化をしていかなければなりません。
——なぜ、今の経営者はコンサルタントに頼りがちなのでしょうか。
【鈴木】経営手法に自信がなくて、考える力が失われつつあるのでしょう。
——経営者に何より必要なのは、自分で考える力であるとお考えでしょうか。
【鈴木】それは経営者に限らず、社員一人ひとりが自分で考え、実行していかければなりません。たとえば、セブン-イレブンの1店舗あたりの平均日販は65万6000円(2018年度)で他チェーンと12万円以上も開きがあります。同じコンビニエンスストアの業界なのに、この差が出るのは、セブン-イレブンでは創業以来、すべて自分たちで考え、実行してきたからです。
セブン-イレブンはアメリカが発祥です。1970年代の初め、スーパーが新規出店するたびに地元商店街で反対運動が起きるようになっていました。そこで、小型店でも大型店との共存共栄が可能なことを示せるはずだと考えて、日本に導入したのが始まりです。
ところが、アメリカでチェーン展開をしていたサウスランドと難交渉の末、契約が結ばれ、開示された経営マニュアルには、期待していた経営ノウハウはどこにも書いてなく、日本では通用しないものばかりでした。自分たちですべてをゼロからつくり上げるしかない。モノも金もなければ、何の経験もない。だから、知恵を出さざるをえませんでした。