日本から世界に向けて発信されたサービスイノベーションのモデルとして、ハーバードをはじめ欧米のビジネススクールで取り上げられるのがセブン-イレブンだ。創業以来、既存の概念を打ち破って、新しいことに挑戦し続け、世界初、日本初を連発し、世界最大の店舗数を展開してきた。その舵取りを担ったのが創業者である鈴木敏文・セブン&アイ・ホールディングス名誉顧問である。第一線を退いたいまなお、流通業の未来を考え続ける鈴木顧問に話を聞いた。(第1回/全3回)
写真提供=セブン&アイ・ホールディングス
セブン-イレブンの1店舗あたりの平均日販は65万6000円(2018年度)と他のチェーンより12万円も多い。その秘訣とは。

コンビニ市場は飽和したのか

——マスコミでは、コンビニの出店数や店舗売上高の伸びが鈍化していることから、コンビニ飽和論も聞かれ、他チェーンのトップも飽和を認めていますが、どう思われますか。

【鈴木】もし、どのチェーンも同質化し、業績も同じレベルであったら、市場は飽和しているといえるかもしれません。しかし、セブン-イレブンの1店舗あたりの平均日販は65万6000円(2018年度)と、他のチェーンと比べて12万円以上の開きがあります。この日販の差は同質化していない何よりの証しです。

——つまり、市場は飽和していないと。

【鈴木】2000年代半ばに、業界全体で既存店売上高の前年割れが相次いだときも、マスコミはしきりに市場飽和論を唱えました。同業他社のトップの口からも「市場飽和」の声が聞こえ、私との基本的な考え方の違いを感じました。

当時、業績が伸び悩んだのは、“踊り場”に差しかかっていたにすぎなかった。コンビニはこれから先も市場の変化に対応していけば飽和はありえない、高齢化や女性の社会進出が進むなかでコンビニこそ、もっと必要とされると、私は一貫して唱え続けました。

実際、セブン-イレブンでは2009年から、「近くて便利」というコンセプトを掲げ、ポテトサラダ、肉じゃが、筑前煮、ひじき煮、きんぴらなど、プライベートブランドのセブンプレミアムのシリーズで惣菜類のメニューを増やすなど、品ぞろえを大幅に見直しました。高齢世帯や共働き世帯が増えるなか、遠くのスーパーまで買い物に出かけなくても、近くのコンビニで食事づくりの手間や煩わしさを解決できるようにした。既存店売上高は増加に転じました。

▼PRESIDENT経営者カレッジ 開講記念セミナーのお知らせ

鈴木敏文セブン&アイ・ホールディングス名誉顧問がPRESIDENT経営者カレッジ開講記念セミナーに登壇。さらには、「これからの時代に成功する経営者の条件」をテーマにオリックスシニア・チェアマンの宮内義彦さんと対談します。
テーマ:「顧客本位を貫く覚悟」
開催日:1月20日 10:30~19:30

会場:一橋講堂

対象:経営者、経営の後継者、次期経営スタッフ
参加費:講演のみ ¥5,000

講演&昼食 ¥6,000

講演&懇親会 ¥10,000

講演&昼食&懇親会 ¥11,000

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