私はインドでIT会社の合弁事業をやっていたからよく知っているが、インド人というのは実力もさることながら、自己アピールに長けている。「私たちの会社はこういう会社です」と、7倍くらい大きく見えるように平気で風呂敷を広げる。まるで孔雀である。

私がMIT(マサチューセッツ工科大学)の役員時代、インド人の入学願書はどれもこれも「天才」みたいに書かれているから、割り引いて判断しなければいけないというインド人ファクターがあった。人口が10億人を超えるような国では、それぐらい押し出しの強さがなければ一線に出てこられないのだろう。

中国で6万社なのだから、人口10分の1の日本は、せめて6000社ぐらい上場予備軍がひしめき合っていてほしい。それなのに年間IPO社数が、わずか60社にも満たないのが今の日本の現実なのだ。

90年代後半、日本でもITブーム直前の「渋谷ビットバレー」と騒がれた頃には、IT関連のベンチャー企業が方々で3000社ぐらい名乗りを上げ、起業がムーブメントになった。大半はイカサマのような事業内容の企業だったものの、熱気だけはあった。新聞などマスコミはこぞって取り上げたし、銀行や商社もベンチャーキャピタルやファンドを立ち上げて投資した。それが今や揃って開店休業中。閉店したところもある。

振り返れば、日本で最大の起業ブームが巻き起こったのは、戦後の鍋釜の時代である。戦前のエスタブリッシュメントの構図が壊れ、学歴のない松下幸之助や本田宗一郎のような型破りな企業家が出てきた。

もともと日本人は「寄らば大樹の陰」で安全志向が強いから、危機的状況に追い込まれないと、なかなか起業マインドが燃え上がらない。インド人のように勝手に火がつく国民性なら放っておいても大丈夫だが、日本人の場合は積極的に火がつくように誘導していかなければならない。

にもかかわらず、せっかくの種火を吹き消すような猿真似SOX法を導入し、米百俵の精神は何処へやら、政府は無駄なバラマキに精を出す。銀行や投資ファンドも若い起業家には貸し渋るばかり。

そんな惨状に、私の堪忍袋の緒は切れた。誰も手を差し伸べないなら、俺たちがやろうじゃないかと、BBTで新しいファンドをつくったのだ。名付けて「SPOF(スポッフ)」。ずばり「背中をポンと押すファンド」で、そのまま日本語の頭文字を取ってネーミングした。BBT関連の大前スクールで勉強した人が事業計画片手に資金を貸してほしいと言ってきたら、簡単なスクリーニングだけで、一口200万円を資金援助するのだ。