実行犯のリクルートから、生活費、武器の調達、訓練費用、逃走費用、残された家族へのケアに至るまで、テロの実行には莫大な資金が必要になる。SWIFTを開示することは人権を踏みにじる行為であり、常識的に考えれば許されなかったが、「9.11」という未曽有の事態に直面したアメリカは、力で押し切りSWIFTを開示させた。最初は9.11事件の捜査目的だったが、「テロ対策」ということであらゆるテロリストや、犯罪者の金の流れを規制・監視しているのが現在だ。
「ホワイト国外し」に米国の影
韓国のホワイト国外しの背後にアメリカの存在を確信する根拠もこれだ。日本から韓国に輸出した兵器転用可能なモノが、第三国などを経由して北朝鮮と関係の深い、シリアやイランに渡ったことがホワイト国外しの表向きの理由だ。
だが、お世辞にも海外に送ったカネやモノの監視機構が優れているとは言えない日本が、韓国を通じてシリア、イランに渡るモノを追いかけることができるとは考えられない。一つ一つのモノにGPSを付けていたというのならわかるが、生産企業にそのような指示は出されていないだろう。
すると導き出される答えは1つ、モノの取引について回るカネの動きを追うことだ。そして世界の中でカネの動きを把握できる唯一の国こそアメリカだ。
報道された順番が違うのだが、今回のホワイト国外しのきっかけになったのは、韓国の半導体メーカー、サムスン電子やSKハイニックスが、日本から輸出されたフッ化水素を中国工場で使用していた件だったという。韓国半導体メーカーによる中国輸出を問題視した正体こそ、最先端技術の生産基盤を中国から自国に取り戻したいアメリカだった。アメリカが中国と戦争を始めた動機の1つが「知的財産権の侵害」だ。もっとも問題視したのは、最先端技術を中国が盗用しているという点だ。半導体の生産工場はその流出元になっている。
19年7月下旬にはサムスン電子とSKハイニックスが揃って、生産体制にアメリカを追加する新長期プランを検討していることが報じられている。アメリカであれば、日本がフッ化水素を輸出できることが理由だ。
すべての点と線はアメリカの国益で結びついている。はじめにあったのは、シリアでもイランでも、ましてや日本でもなく中国だったということだ。ホワイト国外しにアメリカの関与があるという私の疑念は、もはや確信に近いものとなっている。