ガラパゴスな日本の金融機関

だが、黒い春は短いものだった。国際社会で規制を求められ、18年3月のG20財務相・中央銀行総裁会議で、仮想通貨のあり方が初めて議論された。この時点で国際金融に精通する黒い経済人は、今後も規制が強化されることを見越して暗号資産から手を引いた。その読み通り、19年6月に福岡で開催されたG20財務相・中央銀行総裁会議では、暗号資産のアンチマネーロンダリングとテロ資金供与対策を目的とした新規制が合意された。21年までにという期限付きだ。現在でも暗号資産をツールとしている黒い経済人はいるが、国際社会から取り残された周回遅れの人たちでしかないことがわかるだろう。

金融ダークサイド』(講談社) 元経済ヤクザが明かす「黒い経済」の地下世界と金融市場の最前線。

このような激しい動きから取り残されているのが、日本の金融機関だ。金融機関の内外格差の代表がバンクオフィサーの存在だ。海外の銀行では口座を作ると必ずオフィサー(担当者)が付いて、多くの相談に乗ってくれるばかりか提案までしてくれる。資金を持っている預金者には投資先を紹介し、その国でビジネスを始めたいと思ったときにオフィサーに相談すれば資金調達先とのマッチングさえしてくれるのである。

対して日本の銀行にいるのは窓口の担当者くらいで、本質的な意味でのバンクオフィサーが存在しない。AI(人工知能)の金融業界進出によるリストラの筆頭候補になっているのは、むしろ当然のことだと言えるだろう。

日本の銀行の場合は預金を集めるだけ、融資するだけということで、銀行を仲介者としたときに借り手と貸し手が分断されている状況だ。何よりリスクがあるものに対しては融資をしない。海外と日本の金融機関の決定的な差は、このリスク管理の考え方だと私は考えている。

海外の銀行は、国際金融を舞台に非合法スレスレの手段で資金調達を行い、事業投資を行う。リスクは回避するものと考えているのが日本の銀行であるとすれば、リスクは管理するというのが海外の金融機関の考え方だ。

誤解してはいけないのは、こうした日本のガラパゴスな金融環境が、必ずしも「負」として作用していない点だ。金融ショックの際に海外の金融機関が連鎖破綻するのは、常にスレスレのリスクを負っているからだ。手を繋ぎながら綱渡りをしている人が強風で次々に落下することをイメージするとわかりやすいだろう。リスクを徹底的に嫌う日本の銀行は、国際的な金融ショックに強いとも言える。リーマン・ショックのとき、JPモルガン救済に動いたのが三菱UFJフィナンシャル・グループだったことは、その好例と言えるだろう。

米中の覇権争いで金融の不安定が確実視されている状況にあって、日本型の硬直した保守的金融システムが、津波から守る「壁」として有効に機能する可能性もある。新たなフィンテックが生み出す金融環境に対して、日本の金融機関がレガシーな「壁」を維持するのか、大胆な進化を選ぶのか――まもなく訪れる選択を、私は見定めている。

(撮影=久保貴弘 写真=iStock.com)
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