「家でボーッとしてる時間なんて、俺には必要ねえ」
岡田准一は、ただ人生の起点が早かったから、早く自己を確立できた、というわけではありません。とにかくその過程での日常の過ごし方がストイックなのです。そして、そんな日常の過ごし方を変えさせたもの。それは周囲と差があるという自覚によるものだと語ります。
「芸能界に入り、『天才』と呼ばれる才能ある方々を間近で見てきました。自分は地味だから、若いうちから勉強しないと、と心に決めた(※6)」として勉強を始めます。
岡田は悩んだ時期を振り返り、「時間がもったいなくて、家でボーッとしてる時間なんて、俺には必要ねえって思ってたんです。(中略)本を読むか、映画見るかとか、勉強しなきゃ(※7)」とも語っています。
その例がインプットの量です。10代の頃「家帰ったら映画3本観て、本を1冊読んでみたいなノルマを決めて生活してた(※8)」と語ります。もちろん10代といっても、ただの中高生ではなく、多くの仕事に追われる中でのこの量です。
そうして出逢って心に響いた言葉や、映画の感想やカット割りをノートに書き留める、という作業も並行して続けました(※9)。
帰宅前に映画を3本借りて、朝まで見る
本は、デール・カーネギー(※10)をはじめ、考古学に心理学……フロイトやカント(※9)にドストエフスキーにニーチェ(※2)、精神世界やスピリチュアル系の本も読んで、家に遊びに来た母親に「こんなの読んでるの?」と心配されるほど(※9)。読書習慣だけでもすごいことですが、帰宅前に映画を3本借りて、朝まで見るというのもかなり大変な行為です。
「ノルマだから、ストイックに観ましたね(※8)」「寝てる時間があったら身になることをしようと。3本目なんて結局覚えていないから意味はないんですけど、筋肉トレーニングみたいなものです。毎日見なきゃって。やり始めたら続けなきゃと。強迫観念を自分で作ったようなものです(※11)」という言葉からは、ノルマを決めることで自らを追い込み、それを続けることで、自らの型を作り上げていった姿がうかがえます。
とはいえ、その日々は「下積み」というよりも、現在の岡田を「下支え」しているイメージ。その象徴が「学んでる時が幸せ(※7)」と語る岡田の言葉です。辛い下積み時代ではなく、評価される時代の前の、なりたい自分になるための蓄積の時期。それが将来の自分のためになるという確信があるからこそ、学びを幸せと感じることができる。学びという成果が出る前の努力の過程を幸せと感じられることこそ、大事なことだったのかもしれません。